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森ビルが考える“街”の姿に、日本人の影は薄い

 森ビルは今回の開発を「都市の中の都市=コンパクトシティ」と謳っているが、オフィスに入居するアンカーテナントはインドのタタグループ。1戸2億ドルのレジデンスを購入するのは中国、香港、台湾の超富裕層かもしれない。商業施設で高級ブランドを身に着け、5スターホテルで食事し、子息はインターナショナルスクール通い。森ビルの考える“街”の姿に、日本人の影は薄い。

 一方、立川「GREEN SPRINGS」の夕闇は素敵だった。音楽ホールの屋上デッキから昭和記念公園の向こう、富士山をバックに陽が沈む。そこには学校帰りの女子高校生、仕事帰りのカップル、ウォーキングがてら立ち寄ったシニアの夫婦など、街に生きる多くの人たちの姿が見える光景だった。ビオトープの前ではベンチに座り、せせらぎに耳を傾ける女性、カスケード内のベンチに腰掛けてはしゃぐ中学生。これが本当の街の息吹なのではないだろうか。

夕闇が美しかった立川「GREEN SPRINGS」の様子(筆者撮影)

 容積率、投資効果、収益を追うことは資本主義の宿命だ。立川の開発について、あるデベロッパー首脳は「あんなものは道楽だ」と言い放った。もちろんほかに多くの用地を持つ立飛ホールディングスだからこそできた開発だということもできようが、道楽という表現はあてはまらない。

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 なぜならGREEN SPRINGSは確実に立川エリア全体の地域価値を上げているからだ。エリア内の多くの人が訪れ、楽しみ、寛ぐことができる街を実現している地域価値は、目先の利益ではない、未来に向けての大きな果実を実現するものなのだ。筆者としては、この両社の開発の将来を楽しみに見ていくことにしよう。