11月に満を持してオープンした森ビルの「麻布台ヒルズ」。12月には巨大クリスマスツリーなどを楽しむ人々でにぎわいを見せ、さまざまな話題を呼んでいる。「地域価値を上げる開発」とは何か、不動産コンサルタントの牧野知弘氏が考察する。

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 新宿からJR中央線特別快速電車に乗って25分のところに立川駅がある。多摩エリアの中核都市として発展する人口18万人の街だ。この立川駅の北口に出て、多摩モノレールの高架下にあるサンサンロードという遊歩道を10分ほど北に向かって歩いていくと、「GREEN SPRINGS」という街がある。

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コロナ禍にオープンした「GREEN SPRINGS」

立川「GREEN SPRINGS」 ©AFLO

 コロナ禍の2020年4月にこの街はオープンした。開発を行ったのは地元を本拠とする立飛ホールディングスだ。馴染みのない名前の会社と思われる方が多いかもしれないが、立川飛行機と聞けば古い世代の方ならわかるかもしれない。

 立川飛行機は戦前において、中島飛行機、日立飛行機、三菱航空機と並び、軍用機を製造する会社としてその名を馳せた企業である。赤とんぼの愛称で親しまれた九五式一型練習機など多くの航空機の製造をこの立川の地で行った。

 戦後立川基地は米軍の支配下に置かれ、1976年の横田基地への移転に伴い、国や立川飛行機に土地が返還された。今ではそのうちの一部が自衛隊立川駐屯地および国営昭和記念公園として整備され、立川飛行機はその後の幾多の変遷を伴いながら、2012年のMBO実施によって現在の立飛ホールディングスに生まれ変わっている。

 もともと立川飛行場があったことから立飛ホールディングスは広大な土地を保有し、所有面積は東京ドーム21個分に相当する98万㎡、立川市全体の25分の1にも及ぶ。

 立飛ホールディングスは、飛行機製造から不動産業に転身。敷地内に数多くの倉庫を運営するほか、海のない立川でビーチリゾートが楽しめる「タチヒビーチ」、バスケットBリーグや各種スポーツが楽しめる「アリーナ立川立飛」、「ドーム立川立飛」、店舗面積約6万㎡、240店舗が集う「ららぽーと立川立飛」など日々の生活をサポート、エンジョイできる施設を次々と展開している。

 その立飛ホールディングスが新たに開発したのが「GREEN SPRINGS」だ。この土地は南北400m、東西100mにも及ぶ広大な国有地だったが2015年に入札が行われ、立飛ホールディングスが落札した。立川駅徒歩圏の広大な敷地は、開発用地を探すデベロッパーなどの垂涎の土地に見えたが、開発用途で住宅が認められなかったことから、有力なデベロッパーが参加を見送り、地元の雄、立飛ホールディングスが手に入れたのだ。