「主人に対して申し訳なくて、離婚を考えました。乳がんの時はまだ30代だから主人も再婚ができるだろうという思いもありました」

 76歳の後期高齢者芸人・おばあちゃんインタビュー第2弾。乳がんをきっかけに旦那さんと別れようと悪態をついた30代の頃のおばあちゃん……。ときには涙でバスタオルを濡らすほど不安だった彼女を救った、旦那さんの優しさとは?(全2回の2回目/前編を読む)

おばあちゃんの人生を支えた旦那さんの優しさとは―― ©三宅史郎/文藝春秋

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38歳で乳がんに

――今までの人生を振り返って、大きく人生観が変わったできごとは何ですか?

おばあちゃん 38歳の時、ステージ4の乳がんがわかったんです。ワープロを操作している左手がピリピリして、病院に行ったら乳がんと判明して。「なんで自分が……」と思う暇もなく手術で片方を取りました。その後、39歳の時に卵巣、45歳で子宮にも転移。

 そういう経験をすると、時間がもったいないから、やりたいことは全部やろうと思うようになるんです。元々そういう性分でしたけど、人生ではなんでも「今」やらなきゃという思いが加速しましたね。

――いつどうなるか、わからない。

おばあちゃん ただ現実問題として、お金も看護する方の負担もかかる。主人に対して申し訳なくて、離婚を考えたこともあります。乳がんの時はまだ30代だから主人も再婚ができるだろうという思いもありました。

 別れてくれと言って別れる人じゃないから、主人の嫌がることを片っ端からやりました。嫌われようと思って、何をするにも反抗的。「大丈夫か?」って言ってくれても、「うるさいね!」なんていう感じで、わざと悪態をついて。

 でも夜、主人が寝たなと思うと、別の部屋に行ってバスタオルに顔を埋めて、タオルがびちょびちょになるまで泣きました。

――そのとき、ご主人はどういう対応だったんですか。