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おばあちゃん 主人は私のすること、言うことは黙って受け止めてくれました。自暴自棄になった私が、普段なら絶対に買わないような洋服や靴をどんどん買ってきてしまっても、主人は黙ってその様子を見ているだけ。そして、「(買い物で)どんなに借金したとしても、俺が(面倒)見るよ」と言ってくれたんです。それでふと我に返って、やめました。
主人は職人で、本家の7代目だったので、その跡取りがいないのは問題だと。主人の家族からは「出ていってくれ」と相当言われましたよ。その時に別れようと思ったけど、主人は「なんで別れる必要があるんだ」とキッパリ言ってくれました。
「当たり前のことにくよくよ悩んでも意味はない」
――乳がんになったのが38歳。今、その倍の76歳ですね。それなのにバイタリティにあふれています。
おばあちゃん 私は乳がん、主人は肺がん。兄は目が見えなくなり、今は施設にいます。年を取ったら、病気なんて当たり前なんです。その当たり前のことにくよくよ悩んでも意味ないじゃないですか。だったら、そこで何をするのって。
反対に誰かがちょっと崩れた時に一番いい方法は、寄り添うだけですよね。兄から夜中に電話がかかってきて、「お母さんどこ行ったか知ってる?」と聞かれたりするんですけど、「どこ行ったかね」って返したり。
――年を重ねたからこそ、見えたものがあれば是非お伺いしたいです。
おばあちゃん 今こうやって、自由に自分のやりたいことができるチャンスが訪れたということです。今までは生活のために働いて来たから、今がご褒美。
――ご褒美が、新しいことを学び、未知の世界に飛び込むことなんですね。