iPhoneを開発したスティーブ・ジョブズやマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは、子のデジタル機器に利用制限をかけているという。
IT業界のリーダーにもかかわらず、いったいなぜなのか。キャサリン・プライス氏の著書『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(角川新書)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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何か新着はないかとインスタグラムやニューヨーク・タイムズをチェックするとき、じつは内容なんてどうでもいいんだ。ようは新しいことを目にしたいだけだから。みんな、その気持ちに取りつかれてるんだよ。
──アジズ・アンサリ (俳優、コメディアン)
他のテクノロジーとは違うスマホ
これまでにも人々を震えあがらせたテクノロジーはたくさんあった。電報、電話、ラジオ、映画、テレビ、ビデオゲーム、さらには本も。これらはすべて、世に登場したときには騒動を巻き起こしたが、時間が経つにつれて、それほど実害はないと認識されるようになった。スマホもそういうテクノロジーのひとつだと考えたくなる気持ちはわかる。
ところが、無闇に不安をあおるべきではないが、スティーブ・ジョブズはやはり正しかったのだ。スマートフォンは他のものとは違う。もちろん、いい意味でそう表現されることも多い。けれど、スマホは言葉を返す。しつこく気を引こうとする。仕事中に邪魔をする。注目を求め、そうすると見返りをくれる。スマホのこうした厄介なふるまいは、以前ならばきわめて不愉快な人だけに見られるものだった。
そのうえ、スマホはインターネットへの入り口でもある。それまでのどんなテクノロジーとも違い、つねにそばに置いておけるものだ。
スマホはまた、一般消費者向けの商品としてははじめて、使用時間が長くなるように意図してつくられた。グーグルの元プロダクトマネージャーであるトリスタン・ハリスは、こうしたデバイスが人々の心を操るように設計されている、という認識を広める活動をおこなっている。そのトリスタンによると、「1970年代の携帯電話の向こう側には、日々改善に取り組む大量のエンジニアはいなかった……いまのスマホは人を丸めこむ手管にどんどん磨きをかけている 」という。