依存のからくり
ただし、スマホをチェックするときにも、依存を引き起こすのと同じ現象が脳内で起きることはたしかだ。気分をよくするさまざまな脳内化学物質が分泌され、報酬系という回路が起動する。
つまり、革新的なテクノロジーは、ジョブズが言ったように単純に“現れる”のではない。革新を起こすべくつくられる。スマホやアプリの開発企業は、自社製品がもつ神経への作用を認識しているだけでなく、そうした機能を製品にこれでもかと詰めこんでいる――私たちがスマホへ向ける時間と注目を最大化することが明確な目標になっているのだ。業界用語では、それを“ユーザーエンゲージメント(ユーザーとの結びつき)”と呼ぶ。
企業がエンゲージメントにこだわるのはなぜか。間もなく詳細をお伝えするのだが、はっきり言えば、それが利益の源泉だからだ。
だからといって、IT企業が社会に対して害意をもっていると言いたいのではない(むしろ、そうした企業の従業員の大多数は、世界をよりよくしようと考えている人たちだろう)。また注目すべきは、問題を引き起こしかねないスマホの特徴こそ、スマホを便利で快適なものにしているという点だ。依存を引き起こしかねない要素をすべて取り除けば、私たちがスマホを好ましく思う理由もなくなる。
とはいえ、IT企業の経営者たちが自分の子供のスマホ使用を制限しているという事実は、メリットをデメリットが超えうると当人たちが認めていることのあらわれだ――自分たちがつくった製品から、家族を守る必要性を感じるほどなのだから。ドラッグの売人の格言はシリコンバレーにもあてはまる。
つまり、“自分の売りものでハイになるな”。