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火災焼失後に出会った笑福亭鶴瓶

 映画館がなくなってから、わたしは小倉昭和館の特別上映を始めました。その4回目は『バケモン』、笑福亭鶴瓶師匠を17年間追い続けたドキュメンタリー映画です。

「無償で映画館に作品を提供すること」

 これが鶴瓶さんの出した条件で、制作・配給会社の収益はなし。コロナ禍の映画館を救済するのが目的なので、DVDや配信もありません。

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 井筒屋パステルホールでの上映が、2023年2月4日に決まったあと。

 直前になって、鶴瓶さんが小倉にきてくれることになりました。信じられません。二度の上映のあと、落語を口演してくれるのだとか。

 映画『バケモン』には、こんな言葉が出てきます。

「何もしなければ道に迷わないけれど、何もしなければ石になってしまう」

 石になってしまわないように、わたしも動き続けます…。

笑福亭鶴瓶のドキュメンタリー映画『バケモン』の上映ポスター

 2月4日。井筒屋パステルホールは満員になりました。

『バケモン』の上映時間は1時間59分59秒。監督は山根真吾。17年の歩みが、濃密に記録されています。

50歳を過ぎて落語をはじめた鶴瓶

 春風亭小朝さんに誘われて、鶴瓶さんは50を過ぎて、落語をはじめました。まずは師匠の笑福亭松鶴に怒られた日々を描いた創作落語『かんしゃく』を演じます。さらに松鶴師匠の十八番である『らくだ』に取り組みました。これは1時間にも及ぶ古典落語の傑作で、歌舞伎にもなっています。

 鶴瓶さんの『らくだ』を見て、山根監督は衝撃を受けたそうです。発表するあてもなく取材を続けるうちに、鶴瓶さんの落語はますます変貌を遂げました。

 スクリーンに映し出されるのは、鶴瓶さんの日常や、まわりの人たちとの関わり。どんどん引き込まれました。暗闇のスクリーンを観ているのに、太陽の光を浴びたように元気をもらいました。前を向かなきゃという気持ちにもなるし、いまの小倉昭和館にぴったりで、わたしもやらなきゃと思いました。