2023年12月19日、小倉昭和館の営業再開のオープニング上映作品は『ニュー・シネマ・パラダイス』と、笑福亭鶴瓶師匠のドキュメント映画『バケモン』が選ばれた。北九州旦過市場一帯の大火災で、小倉昭和館が焼失してから496日。まちの人たちの居場所をつくるために、三代目館主の樋口智巳さんはあきらめなかった。
映画館の経営は厳しい。お金もかかる。涙も枯れ果てるような日々を支えてくれたもののなかには、光石研さん、仲代達矢さん、笑福亭鶴瓶さんたちの存在もあった――。樋口智巳さんの著書『映画館を再生します。小倉昭和館、火災から復活までの477日』(文藝春秋刊)より抜粋・再構成してお届けする。(全2回の2回目/1回目から続く)
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北九州生まれの光石さんに初めてお目にかかったのは十数年前のこと。わたしは館主になったばかりで、舞台挨拶にきてくださいました。
ランチを兼ねた打ち合わせで、ずっと映画の話をしました。
「作品が何だったかは覚えていないのに、小倉昭和館主の樋口智巳さんの映画愛、俳優愛、昭和館愛は強烈に覚えています」
と、光石さんはエッセイに書いてくれました。
小倉昭和館を舞台にした映画を撮った光石研
2020年のコロナ危機では、「映画の街・北九州」を盛り上げるために、ショートムービーがつくられました。
昭和館が舞台です。企画は北九州フィルム・コミッション(KFC)。制作はテレビ西日本。昭和館の館主役を、光石さんが演じます。客席やロビーはもちろん、二階のバックヤードや映写室でも撮影しています。
旦過市場でも、ロケをしました。撮影の合間には「がんばりよ」とか、「応援しよるよ」とか、まちの人たちが声をかけてくれます。
二人一組のソファ席「光石研シート」の誕生
その年、光石さんが北九州市民文化賞を受賞されます。賞金30万円を寄付してくれたので、光石研シートをつくらせてもらいました。