地元の不動産会社が一番困惑させられること
仮に40坪の土地が30万円で売れれば御の字という市場で、100万円以上の費用を投じて家屋を解体し、土地の売却益でその解体費用を回収することなど不可能だ。ましてや近隣に似たような更地が数多く残されている住宅地では、値下げを繰り返す消耗戦にならざるを得ない。地元の不動産会社にとっても一番困惑させられるのが、この「解体後の更地」の売却依頼の相談である。相談を受けた時点で解体してある以上すでに手遅れで、もはや売主を満足させられる回答ができないのだ。
よほどその家が「危険空き家」と呼べる状況でもない限り、築古であるという理由だけでいきなり空き家を解体してはならない。2023年4月に「相続土地国庫帰属制度」が創設されたが、この制度は家屋がある不動産は帰属の申請ができないので、もし同制度の申請のために解体を検討している方がいるとすれば、それは早計であると強く述べておきたい。解体はあくまで最後の手段である。
また、空き家をリフォームして賃貸物件として活用する手段も確かにあるが、これもまた激戦区の市場に新規参入するリスクを背負わなくてはならない。資材価格や都市部の物件価格の上昇により、今は地元の不動産会社でも、廉価な物件を仲介ではなく自社で買取して賃貸物件として運用したり、あるいは買取物件をリノベーションして再販する会社が増えており、賃貸経営には個人の投資家も大勢参入している。
仮にライバルが少ないとしたら、つまりそこは賃貸需要の乏しいエリアに他ならず、結局は賃貸経営のための知識と戦略が問われることになる。ただ漠然と、賃貸に出せば定期的な収入が得られるとの安易な目論見だけで参入できる市場ではなくなっている。
まず大前提として、限界ニュータウンの物件には過度な期待が禁物なのだ。都市部の人が、都市部の地価水準で思い浮かべる「安値」より、実勢相場はさらにもう一桁下回っていたりするのが限界ニュータウンの物件である。その実勢価格とのギャップに感情面で折り合いが付けられず、売却の機会を取り逃してしまった物件はあまりに多い。