両親から相続した実家を25年間も空き家状態にしたことで、総額1800万円もの維持管理費などを払うことになった、タレントの松本明子さん(57)。2017年1月にNHKの番組『クローズアップ現代+』へ出演したのを機に実家じまいを決心し、2018年1月に約600万円での売却を成功させる。

 2022年6月には、実家を売却するまでの顛末などを綴った著書『実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社)を上梓し、大きな反響を呼んだ。

 節約家として知られる松本さんがなぜ、空き家に大金を注ぎ込むことになったのか。経緯を詳しく聞いた。(全4回の1回目/2回目に続く)

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松本明子さん ©三宅史郎/文藝春秋

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実家は父のこだわりが詰まった伝統建築

――松本さんの実家はどのような家だったのでしょうか。

松本明子さん(以下、松本) 幼い頃は香川県高松市内の借家を転々としていたんですけど、昭和47年、私が6歳のときに父が念願のマイホームを建てまして。

 市内から8キロくらい離れた市街地をのぞむ山の中腹に、敷地約90坪、間取り5DKの家を完成させたんです。そこで父と母、10歳上の兄と私、そして祖母の5人で暮らし始めました。

――お父さまのこだわりが詰まった家だったそうですね。

松本 宮大工にお願いして、総ヒノキ造りで、釘を使わない「木組み」という伝統建築で建てた平屋でした。

 名石として知られる庵治石(あじいし)を使って、庭に石灯籠や石段、石垣を作ったりもして。約3000万円もかけて建てた父の「お城」でしたね。

約3000万円もかけて建てた父親こだわりの実家(写真=松本明子さん提供)

 でも当時の私にとっては、少し不便な家でした。山の中に建っていたから、市内の幼稚園に通うのに片道1時間もかかったんです。急すぎる坂道を歩いて下りるのに、30分もかかって。そこからさらに30分電車に乗って幼稚園へ行く、みたいな。

――幼稚園まで片道1時間は結構な距離がありますね。

松本 小学生になってからも、2~3キロ離れた小学校に片道40分くらいかけて通っていましたね。そんな家で約10年、15歳まで過ごしました。

――歌手を目指して上京したのが、15歳のときですよね。当初、お父さまにはかなり反対されたとか。