――2023年は小津安二郎生誕120周年でもありますね。
ヴェンダース メモリアルイヤーにこの映画が公開されることはとてもうれしいことだと思う。
なぜ冴えない中年男性を主人公にするのか?
――ところで、監督の映画は、『ベルリン・天使の詩』(87年)を筆頭に、ちょっと冴えない中年男性が主人公の物語が多いように感じます。おっしゃったように、モダンな女性との対比という部分もあったりするのでしょうか。
ヴェンダース 『ベルリン・天使の詩』の主人公は天使だから、正確にいえば違うんだけど(笑)。でも、彼が人間になるときは冴えない中年男性であるのは確か。なんでだろう。成功している人の物語を作るのはすごく難しいからじゃないかな。どうすれば成功するのか僕自身が想像つかないんだ。
……あ、でもドキュメンタリーで撮った人で1人いる。『ローマ法王フランシスコ』(18年)。彼は、ある意味では成功者だ(笑)。
ただ、フィクションのキャラクターとしては、成功している人はつまらない。人生に躓いたりするから物語が面白くなる。成功は魅力的ではない。間違っているかな?(岡村ちゃんを指し)僕は彼の映画を撮ったほうがいい? 彼は成功してる人?
――日本のポップミュージック界の成功者です。ただ、悩み多き人であり、独特の世界観の詞と曲は唯一無二。熱狂的なファンがたくさんいます。そして、あらゆる楽器を演奏し、歌って踊れるエンターテイナーでもあります。
ヴェンダース ほお、ダンスもうまいんだ。それで赤い靴が似合っているんだね(笑)。
※作中で挿入された音楽をめぐる秘話や、仕事のパートナーでもある愛妻との関係、老いと映画製作についてなど、全文は『週刊文春WOMAN 創刊5周年記念号』でお読みいただけます。
Wim Wenders
1945年デュッセルドルフ生まれ。『パリ、テキサス』(1984)でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、世界的に名声を得る。『ベルリン・天使の詩』(1987)で同監督賞を、『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(1993)で同審査員特別グランプリを受賞。
Yasuyuki Okamura
1965年兵庫県生まれ。音楽家。86年デビュー。NHK-FMとNHKラジオ第一で不定期に放送されたラジオ番組を書籍化した『岡村靖幸のカモンエブリバディ』(双葉社)が発売中。11月11日より「岡村靖幸 2023→2024 WINTER TOUR」を開催中。
photographs: Takuya Sugiyama
【週刊文春WOMAN 目次】特集 母と娘って。/内田也哉子が聞く、本木雅弘「婿の言い分」/peco×窪美澄/稲垣吾郎×市川沙央/岡村靖幸×ヴィム・ヴェンダース/香取慎吾表紙画 全20作 ミニ画集
2024創刊5周年記念号
2023年12月22日 発売
定価770円(税込)