――改めて、現在の亮夏さんの活動について教えていただけますか。
畠山 これから社会に出ていく学生さんたちに向けて、「人の役に立つこと、働くことは素晴らしい」と伝える活動をしています。今は、介護や福祉関連の専門学校や大学に赴くことが多いですが、今後はもっと幅を広げていきたいと言っていますね。働くことの素晴らしさは、どの業界であっても共通なはずなので。
あとは、SNSで重度脳性麻痺の日常生活を発信しています。リアルな発信をすればするほど、アンチコメントもつきます。でも時々、「亮夏くんの発信を見て、介護や福祉の仕事がしたいという夢ができました」というコメントをいただくんです。この発信がきっかけで、介護や福祉に興味を持つ人が増えるかもしれない。社会貢献につながるかもしれない。その可能性を感じて、亮夏と2人でワクワクしています。
「人と違う」価値を模索し続けてきた24年間の歩み
――亮夏さんとの24年間の歩みを、どのように捉えていますか?
畠山 もともと私は、「人と違うことはいけないことだ」と思っていました。でも、明らかに周りと違う亮夏に出会ったとき、「彼がいけないわけがない!」と思ったんです。企業や商品が「違い」を価値にするように、私たち人間だって違いを活かせばいい。それを模索し続けてきた24年間でしたね。亮夏と向き合うことで、「みんなと同じであること」「正しいこと」に囚われていた私自身も救われていたのだと思います。
――最後に、畠山さん自身の今後についてもお聞かせいただけますか。
畠山 まずは著書『ピンヒールで車椅子を押す』を、必要としている方に届けたいです。そのために、今は各地域で講演会を行っています。参加者の中には、「車椅子ユーザーで外出することが怖かったけど、亮夏くんの行動力に励まされて今回1人で参加しました」という方もいたんですよ!
そして、いつか映画化されるのが夢です。「人と違っていいんだ」「どんな境遇でも、自分を諦めなくていいんだ」と、たくさんの人に知ってほしい。その考えが日本中に広まれば、自分のことを好きになり、生きやすくなる人が増えるんじゃないかなと思っています。
撮影=橋本篤/文藝春秋