両親の反対を押し切って実家を飛び出し、19歳のとき結婚・出産した畠山織恵さん(44)。生まれた息子・亮夏(りょうか)さん(24)は、生後9ヶ月で「脳性麻痺」と診断された。彼女は、障害とともに生まれたわが子を、どのように育ててきたのだろうか?

 今年7月、親子の歩みを綴った著書『ピンヒールで車椅子を押す』(すばる舎)を上梓した畠山さんに、育児中に心がけていたことや、亮夏さんと取り組んだ数々のチャレンジ、夫を含めた家族のリアルな関係性などを聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

畠山織恵さん ©橋本篤/文藝春秋

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心がけたのは「子ども扱いしない」子育て

――生後9ヶ月で重度脳性麻痺と診断された亮夏さんは、今年で24歳。現在は、大学などで講師として活躍されています。

畠山織恵さん(以下、畠山) 障害の有無に関係なく、「僕は僕のことが好き」と心から思える人生を歩んでほしい、と子育てをしてきました。私のやり方が正解だったかどうかは、今もわかりません。でも彼が家族以外の人たちとも交友関係を広げて、様々なチャレンジをしている姿を見るのは嬉しいですね。

――育児をするうえで、どのようなことを心がけたのですか?

畠山 子どもだからわからないとか、子どもだからできないとか決めつけず、対等の人間として接するように心がけました。親は自分の子どもをついコントロールしたくなりますが、亮夏を1人の人間として尊重するために、親子の距離感を大切にしてきたんです。

 子どもの行動や言動って、大人からすると「何考えているの?」と思うことも多いじゃないですか。もしそう思っても、一呼吸置いて「なぜそれがしたいのか」「どうしたら実現できると思うか」と、話を掘り下げて言語化のサポートをしていく。やってみてうまくいかなかったら、どうしてだめだったのか、次は何があったらうまくいきそうかを一緒に考えて、次につなげるんです。

子どもの頃から様々なことにチャレンジしてきた亮夏さん(写真=畠山織恵さん提供)

――「親と子」というよりも「人と人」として接するんですね。

畠山 私自身の経験から、「親の言うことは絶対」という親子関係がものすごく息苦しかったので……。親の意見を参考にするのは良いけど、親も間違えることはある。だから、最終的な判断はなるべく自分でしてほしいなって。