殺人まで告白した本当の理由
小さな声でマスク越しにこう語った被告だったが、当初は「秀平さんは大体身長が170から180センチくらい、体重は100キロぐらいあった。体格的にかなう相手じゃない」ことから、すぐに諦めたという。
にもかかわらず、事件当日の朝、須藤さんから「今日、年金の日だろ。下ろしに行くぞ」と言われたことから、殺害を実行した。「祖父の年金の日です。正直もう、あとがないなと。もう金取られるしかないのかな。殺害するという考えに至りました。当時もう米農家はやっておらず、家族の年金で生活……取られると大変なことになると思った」と被告は語る。
「事件後は、秀平さんのこともあって、引きこもる生活をしていた。前向きになれず、家族の年金で暮らせることに甘えていたのだなと思います。1人殺している……人を殺している自分が仕事、人と関わることに恐怖があって、どうでもいいやと投げやりになった」
そう語る被告は、明るみに出ていなかった殺人まで告白したのはどういった思いからなのかを弁護人に問われると、こう述べた。
「15年のあいだ隠してきた。どこかで言わなきゃいけない気持ちがずっとあって、ここで言わなきゃもう言えないのかなという気持ちがあった」
判決では「事件直後の自首と同じ評価をすることはできない」
須藤さんとその兄は幼少期、一緒に暮らしていた母から暴力を受け、また1年近くアパートに置き去りにされるなど育児放棄の被害にあってきた。母の恋人からも激しい暴力を受けた末、児童養護施設に預けられ、中学卒業後に就職した。苦労をともにしてきた弟が殺害されていたことを長年隠されていた須藤さんの兄は、強い怒りを調書に語っている。
「当日や翌日に自首するならまだ理解できたが、秀平を埋めて15年、死を隠し続けていた。反省したり悔い改めようとしてる人間のやることと思えない。死刑や無期懲役、厳しい刑罰を望みます」
12月18日の判決では「殺すほど切迫した状況ではなかったのに殺すことで解決する意思決定は強く非難されるべき。金銭を要求する被害者にも問題はあったが、殺して解決する問題ではなく、短絡的」と懲役13年が言い渡された。
自首により明るみに出た殺人ではあるものの「15年が経っており、横領を総会で説明したくないという経緯は、事件直後の自首と同じ評価をすることはできない」と、“横領の説明からの逃げ”であると指摘されていた。