ブルーシートをかぶせ、庭にスコップで穴を掘り…
被告は「これに応じたら、今後も祖父の年金を奪われ、生活できなくなる」と思い、須藤さんの殺害を決意。バールを手に取り、玄関先にいた須藤さんの後頭部を狙い、複数回殴りつけた。身動きできないほど弱った須藤さんにブルーシートをかぶせ、庭にスコップで穴を掘り、やがて息絶えた須藤さんを埋めた。
須藤さん殺害後の被告は自暴自棄になっていた。「その後ほとんど働かず、家族の年金や、友人を騙した金で生活し、遊興費や生活費のために自治会費を横領した」(弁護側冒頭陳述)という。
110番通報した日は、自治会の総会が予定されていた。その1年前から会計担当として口座を管理していた小川被告も、総会で収支報告をすることになっていたが、たびたび自治会費を着服し、パチスロ代や生活費に充てていた。そこで「区長に使い込みを相談したところ、総会で説明するように言われた。被告はこれを逃れたいと110番通報し、警察に殺人と横領を申告し、自首した」(検察側冒頭陳述)のだった。
「その金は順也が出すようになった」
父親の介入により、一度は関係を絶ったはずだった被告と須藤さんがふたたび会うことになったのは、須藤さんが突然、被告の家を訪ねてきたことからだった。このとき、同じく同級生である共通の友人・Aさんも一緒だった。やがて被告の家に居候するようになった須藤さんはその当時、Aさんの家に居候していたのだ。
Aさんはふたりと中学生の頃、親しくなったという。被告を「順也」、須藤さんを「秀平」と呼びながら調書でこう語る。
「最初は公園で遊んだりしていたが、そのうちカラオケやゲーセンにも行くようになり、その金は順也が出すようになった。当時、順也が秀平に直接金を渡すところは見たことがないが、秀平からたびたび『順也に買ってもらった』とゲームやおもちゃ、服を見せられることがあったし、順也からも『秀平に頼まれて修学旅行のお土産代や遊ぶ金を出した』と聞いたことがあり、当時から順也は秀平のためにかなりの金を出してるのだろうとは思っていた」(Aさんの調書)
中学卒業後、一旦は交流が途絶えたものの、ふたたび被告から連絡を受け、ふたりと遊ぶようになる。
「この頃の遊ぶ金は順也が自分から出して、パチスロの時も『これ渡すから遊んでて』と秀平たちに現金を渡していた」(同前)
と、要求されて払うだけでなく、自分から金を出すこともあったという被告は当時「実家が田んぼやってる」などと出どころを説明していたのだそうだ。こうして再開した交友関係だったが、Aさんはほどなく、被告と須藤さんとは距離を置くようになる。当時、須藤さんと共にホテル住まいをしていた、須藤さんの兄の存在が理由だった。
「秀平の兄が出てくるようになって、『金を用意しろ』だの『金がないから順也を呼んでこい』などと私に命令するようになり、関わるのが嫌になった。先輩はこの頃、秀平と同じく市内のホテルで暮らしていて、順也は秀平だけでなく先輩の分のホテル代も支払ってると聞いていた。先輩が出てきてからは『兄貴に言われるから』などと言って、私の前でも、順也に金を用意するように要求するようになっていったと思う」(同前)