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〈大山のぶ代が、バカになったらしい〉とネット掲示板に書かれたことも…大山のぶ代(90)の認知症を公表するまでにパートナーが直面した「数々の試練」

『娘になった妻、のぶ代へ』より #7

2024/01/04

genre : ライフ, 社会

note

 実際のところ、僕が言わずともカミさんの異変を察知していた人は、意外と多かったのかもしれない。きっと皆、マムシ同様に自分から聞くのを憚って、僕が言い出すのを待っていてくれたのではないかと、今では思う。

 ただ、だからこそ、カミさんに連絡してくる人も減ってしまった。

「大山さんは大変みたいだし、こちらから連絡したら申し訳ない」

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 そう気を遣わせてしまったのだろう。僕が秘密にしていたことで、結果的に彼女を世間から隔絶し、孤独に追い込んでいたのかもしれない。

インターネットに書かれた悪質なデマ

 さらに、インターネットの掲示板に、酷い書き込みをされていることも気になっていた。

〈大山のぶ代が、バカになったらしい〉という汚い言葉の表現もあれば、中には〈亡くなった〉などという、まったくの悪質なデマもあった。僕は普段、この手の掲示板など見ないのだが、知人から「『大山さんが亡くなった……』という書き込みを見たんだけど、本当なの?」と心配して電話がかかってきたのだ。

 カミさんが脳梗塞で倒れてから7年――。

 一時的に仕事復帰したとはいえ、ほとんどメディアに登場しなくなったことによって、様々な憶測を呼んでいたのだろう。

 このまま間違った情報が流され続ければ、友人はもちろん、仕事でお世話になった人にも心配をかけてしまうことになる。また、いつマスコミに嗅ぎつけられて、予期せぬ形でカミさんの写真を撮られてしまうか分からない。

 考えに考えた末、僕は、ラジオで認知症を公表することを決意した。決断してからは、時間の流れが不思議なほど早く感じられた。

 マムシが、あれよあれよという間に段取りを整えてくれ、TBSのラジオ番組『大沢悠里のゆうゆうワイド』で告白する日が、ついにやって来た。

娘になった妻、のぶ代へ (双葉文庫)

娘になった妻、のぶ代へ (双葉文庫)

砂川啓介

双葉社

2017年5月11日 発売

〈大山のぶ代が、バカになったらしい〉とネット掲示板に書かれたことも…大山のぶ代(90)の認知症を公表するまでにパートナーが直面した「数々の試練」

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