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『春の珍事』(49)は、ひょんな事故から木製バットをよける化学物質を手に入れた中年の学者が、メジャーリーグで投手デビューするコメディ。
『エイトメン・アウト』(88)では、1919年に起こったブラックソックス・スキャンダル(ワールドシリーズの八百長事件)の深部が、実録風のタッチでさまざまな角度から照射される。濁りの描写が渋い。
『フィールド・オブ・ドリームス』(89)は、W・P・キンセラの小説をもとに、残酷な現実を紙一重でも上回ろうとする幻の気配を大切にした映画だった。失われた時や挫折した人々を鎮魂する思いが、静かに伝わってくる。
思わず頬が緩む岡本喜八のコメディ
ここにもう1本加えるとしたら、思い切って『ダイナマイトどんどん』(78)はどうだろうか。岡本喜八監督の撮ったコメディで、第2次大戦後の小倉が舞台。対立するやくざ組織が縄張りを賭けて野球の試合をするのだが、選手たちの破天荒な手口が、草創期の乱暴なアメリカ野球を連想させ、思わず頬がゆるむ。