岡村靖幸さんが様々なゲストとトークする連載「幸福への道」。
11月上旬、東京国際映画祭にやってきたヴィム・ヴェンダース監督との対談をなんとか実現させたいと粘るも、ツアー中で多忙を極める岡村ちゃんと、映画祭審査委員長を務めながら新作映画『PERFECT DAYS』の取材に分刻みで対応しなければならない監督と、両者のスケジュールが合わず。
とはいえ、岡村ちゃん最愛の監督の話を聞けるチャンス。ということで、編集部が岡村ちゃんの等身大パネルと、岡村ちゃんが作成した「長い長い質問リスト」を携えて突撃。監督は、岡村ちゃんのパネルに興味津々、「彼は赤い靴が似合ってるね!」と喜んでくれました。
『週刊文春WOMAN 創刊5周年記念号』から一部抜粋・編集の上、紹介します。
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印象に残っていた東京の建物は、すべてなくなってしまった
――監督は以前、『東京画』(1985年)や『都市とモードのビデオノート』(89年)などのドキュメンタリーや、『夢の涯てまでも』(91年)といった映画で何度か東京を撮られています。そこから長い年月を経て、再び東京を舞台に撮りました。2020年代の東京はどうでしたか?
ヴェンダース エネルギッシュで、昔と変わらずいまも驚くくらい安全。ヨーロッパと比べると、都市全体がリラックスしているから、東京では、歩いたり、地下鉄に乗ったりするのが好きなんだ。
パリやロンドンやベルリンは何かとストレスが多く、かといって、車に乗ると、スピード超過を気にせず走る自転車にイライラしてしまう。ベルリンでは、自転車レーンのために車のレーンを減らしていてね。
だから、いまの僕は電動自転車しか乗らない。専用レーンを走るから、車よりも速く走れるんだ。でも、東京では自転車に乗ろうとは思わないな。自転車レーンがないのは不安だ。……って、なんで自転車の話をしてるんだっけ?
――なんででしょう(笑)。じゃあ、昔と今の東京では、どんなところが変わったと感じましたか?
ヴェンダース ずいぶん変わったと思う。当時印象に残った建物などは、今回見つけることができなかった。全部なくなってしまったんじゃないかな。例外は銀座の和光ビルぐらい。昔の渋谷駅も消えてしまったし。