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「球場が満員になって、みんなが声を出してくれて、ようやく形になったんやなって」バファローズを愛するふたりが語る「応援の力」

ガガガSP・コザック前田×大阪紅牛會・和田益典 #1 文春野球コラム ウィンターリーグ2023

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「叶うべき夢の先へ、到達」コロナと3連覇と声出し応援の解禁

コザック この『讃丑歌』の歌詞にある「叶うべき夢の先へ」は2021年優勝することで“到達”して、それからバファローズは3連覇。ここ数年は和田さんも激動だったのではないですか?

和田 そうやねぇ。それまでがずーっとBクラスで、ぶっちゃけ一時は優勝なんて一生できへんわって思ってたからね。それが3回も続けて優勝してるやん。ここ数年でバファローズはチームの実力はもちろん、選手一人一人がすごく華のある魅力的なチームになってくれた。まぁ、日本シリーズに負けてどん底の気分やけど。

コザック (笑)。

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和田 あの頃は、常勝チームのファンや応援団とかに「おまえら優勝軽いやろな~」なんて言うとったけど、今は逆に俺らが軽いって見られてしまってるかもと思うとね。

コザック ああ、わかります。だけど、実際に勝っていても、外から見るのと全然違いますよね。

2008年、試合前の国歌独奏をする和田氏

和田 そうそうそう。余裕なんてないよ。こんなんやったんや……みたいなね。ただ、バファローズの場合は、せっかくチームが強くなって、お客さんも入るようになった。さぁ、バチクソ応援したるでって時に、コロナになって応援ができなくなってしまった。せっかくの優勝なのに、声出して喜べないって…なんでやねんってなりましたわ。

コザック だから今年は声出しが解禁されてのはじめての優勝。また全然違った感慨があったんやないですか?

和田 過去2年優勝はできたけど、俺らは応援団やから、やはり全力で旗振って、おもくそ太鼓叩いて、声出してラッパ吹いて、お客さんとチームを鼓舞した中で全員で優勝を体感してほしかった。

 今年、最後は負けてしまったけど、「応援歌を作る」という立場からしてみると、前の2年とは違って全てが解禁された中でのあのスタンドの光景は感動したよ。長かったけど、やっと完成形にすることができたかなと。球場が満員になって、みんなが声を出してくれて、ようやく形になったんやなって……感慨深いものがあったよね。

コザック ここ数年はコロナで声を出せないしんどい時間でした。ライブハウスでも制限があって野球界も声が出せない。その中でどうやってパフォーマンスをしていくのか。僕らのバンドもコール&レスポンスが基本やから、それができないっていうのは、ライブの形をどうしても窮屈な形に変えなければいけなくて、すごく難しいところがありましたね。

和田 いやでも、このコロナ中に、俺も何度かガガガのライブを観に行かせてもらいましたけど、すごかったわ。そもそもガガガのライブは客が「うおー」だ「ウラー」だ声上げて、水をかけまわって暴れ回るんがお決まりですよ。そのライブが、拍手だけで、お客同士距離を開けて、それでもステージの4人は全開でやって会場は盛り上がる。俺はあれ見てメッチャ感動しましたね。

コザック 制限がある中でどうやってお客さんを盛り上げていくか……いろいろ考えましたけど、順序があったやないですか。最初はもう無観客で配信だけ。これはほぼリハーサルと変わらんのやけど、誰がどうやって見ているかまったくわからへん。誰もいないライブハウス、メンバーともスタッフとも距離をとらないといけない状況下。そこから比べたら、お客さんが少しでも入れるようになっただけでも全然マシだったし、ありがたかったですよ。

和田 球場も同じやね。一昨年、去年と念願だった優勝という最高のペナントレースがあっても、やっぱり声が出せないもどかしさがあった。コロナがひどくなって、無観客になって。うちの団員に球団通して選手達から「無音が耐えられない」って話を聞いたから、急いで夜も寝んとレコーディングして、その音源を球場でスピーカーから流してもらった。それでも新曲が出来てても歌ってもらえない。今年は『バファエール』という曲が大きく取り上げてもらったけど、あれ今年作った曲やなくて、コロナ禍の2020年。2年連続の最下位になった年の秋に作った曲なんよね。

コザック 「栄光と挫折を何度と繰り返そうと」って、歌詞にもあります。発表したあとにすごい聴いた覚えがあるんですけど、応援歌のいわゆる8小節じゃなくて1曲丸々書いてくる……実に和田さんらしさがある曲だなと思いましたね。


和田 そうやね。『酔勝歌』とかああいう長い曲の部類ね。『バファエール』は、コロナになって歌えないなか、2021年にスピーカーからスタジアムバージョンを流してもらって。それをYouTubeでも公開したり。

コザック それが、今年の声出し応援が解禁でようやく歌えるようになって、『バファエール』も最後はすごい合唱になりましたよね。

和田 鳥肌立ちました。開幕からだんだんと声が大きくなっていって、CS、日本シリーズはえらい大きな声になってね。日本シリーズの初回の声なんか……ウルってきましたよ。やっぱり、あの曲は特殊な魔法が掛かってますわ。

コザック うん。でも、その魔法もやっぱり最初から掛かっていたわけじゃなくて、声が入ることによって大きく変わってきたんでしょうね。

和田 それもいきなりじゃなくて、徐々にできていったからやろうね。だから、コロナ禍が生んだ副産物的な要素もあるんです。その間に、チームも最下位から優勝3回もできるまでになった。この曲も、どんどん成長していって、流れると球場の雰囲気が変わるんですよ。相手が飲まれるとか、そういう要素も見えたし、作った時は『讃丑歌』に続くマルチテーマ2としてどんな位置づけの曲になるかな?と思ってたら、なんや……数ある応援歌の中でも中心になってるやん!て。

コザック 歌っていうのは、聴いてくれる人、歌ってくれる人の手に渡ってどんどん形を変えていきますからね。

和田 やっぱり歌は生き物や思います。俺らの場合はその全てが応援歌なので、お客さんが歌ってくれんことには成り立たんわけです。

 原石が磨かれて宝石になるのと同じ。ファンの皆さんには曲が出来るたびに「この曲みんなで愛してくださいね」、「育ててくださいね」、と常々言ってるのですが、『バファエール』は本当にすごい曲に成長させてもらった。男女でパートが分かれたりするんやけど、女性パートのキーが高くてしんどいのは予測してました。分かっていたけど、あのキーが一番良かったので。すみません、ホンマによぉ頑張って歌ってくれました。

コザック 結局、作った人がどれだけ作るのに時間を掛けようと、テキトーにつくろうと、思い入れがあろうと、関係ないですからね。全部が全部じゃないけど、タイミングとかいろんな要素があって、作った時の思いとはまったく違うものになっていくことが多いです。

和田 おお。ちなみに『忘れられない日々』はすぐできたんですか?

前田 まだ考えた方ですね。『晩秋』がレコーディング2日前です。

和田 なるほどシングルやね。でもなんとなく、そんな予感がしますわ(笑)。

(構成:村瀬秀信)

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