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 休みの日が来ると、疲れ切って一日中寝ていました。そして月曜日の朝がとてつもなく憂鬱になるのです。いつの間にか、僕は朝、布団から出られなくなっていました。

 精神科に行くと鬱病と診断され、しばらく仕事を休職することになりました。大学院の友人でも鬱を経験した人は何人かいましたが、自分は昔からポジティブで、無縁だとばかり思ってきました。ところが、年齢を重ねるたびに、心も体も回復力が落ちてきているのを実感しました。

 体調が回復しても、僕は図書館には戻りませんでした。次のアルバイトは、大型書店の書店員です。同じ本を扱うにしても、書店の方がずっと雰囲気は華やかでした。

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 いち早く新刊を手に取り、売れ筋の書籍を確認できるだけでテンションが上がりました。アルバイトなので給料は低いですが、僕は少しずつやる気を取り戻していきました。

「無敵」になれない烙印

 僕は書店でのアルバイトの他に、弁護士事務所でアルバイトをすることになりました。奨学金返済の件で相談に乗ってもらっていた弁護士の先生が、大学の先輩だったこともあり、お世話になることになったのです。

 僕はこの頃、高学歴ワーキングプアとして、貧困問題に取り組む団体の活動やデモなどにも参加するようになっていました。

「栗山悟、○○大学卒業、社会学と文学の修士号持ってますが、勉強しすぎて借金まみれで……」

 そんな自己紹介に、

「○○大学! 凄い! エリートじゃん!」

 と称賛の声が上がり、僕は嬉しくてテンションが上がりました。ただ、この反応に面白くなさそうな顔で僕を睨みつけている女性がいたのです。

 女性には著書もあり、一部の人の間では有名な人だという話でした。ところが、彼女の書いたものをざっと読んだのですが、正直、感情論だけで、あまりに勉強不足な内容に驚きました。そして次に会った時、

「この分野は僕の専門なので、わからないことがあれば聞いてください」

 と、親切のつもりで彼女に言ってしまったんです。それが、彼女のプライドを傷つけてしまったのか、物凄い形相で無視をされ、気まずい雰囲気になってしまいました。

 学歴のない彼女は僕を目の敵にしているのか、「○○教授と対談した」とか「次は○○出版から本を出す」とか、事あるごとにマウンティングされるようになったのです。

 彼女は僕が学歴差別主義者だと周囲に言いふらすようになり、仲間になれたと思った人たちも、次第に僕から離れていきました。

 ここでは、不幸な境遇、体験が多ければ多いほど尊敬され、カーストが高いのです。

 地方から出てきて苦労している人も多い中、埼玉県で生まれ、大学院まで進学し、親も健在で、実家暮らしの僕など、やはりここでも最下位カーストです。

 生まれながらの属性や家庭環境といった、自分ではどうしようもない問題で困窮に至った人たちは、自己責任を否定し、社会が悪いと堂々と主張できるのでしょう。それに比べ、ただ、人生の選択を間違えただけの僕は、自分を責めるしかないのです。

「栗山さんは甘い! 落ちるとこまで落ちていない!」

 と社会活動の現場ではいじめられました。落ちるに落ちれない、上がるに上がれない……、無敵にもなれない僕こそ最弱なのです。