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慎太郎にこの夜景を必ず見せよう
だとすれば、今私のやるべきことは、暗闇を彷徨(さまよ)う慎太郎に光を見せてやることだ。それがこの子を預かった使命なのかもしれない。
慎太郎にこの夜景を見せよう。必ず見せよう。
それまでは絶対に泣くまい。
もし、泣きそうになったら、笑ってやろう。
私は踵(きびす)を返し、病室へと急ぎ足で戻りました。
そっと病室の扉を開けると、薄明かりの中で慎太郎がこちらを向いたのが分かりました。
「お母さん」
慌ててベッドサイドに駆け寄りました。
「なに? 慎太郎」
慎太郎は、薄目を開けてぼんやりとしていました。
「いるなら、いい」
そう言って瞼を閉じ、眠りに入りました。
「ここにいますよ」
呟くようにそう言いました。そしてそっと我が子の頬を撫でました。