明け方まで作業が続いた官僚は、翌朝何時に起きるのか
さて、21時に質問内容の通告があった場合、30分もしくは1時間後に質問内容に関する「議員レク」が実施される。官僚たちが国会議員のオフィスに出向き、資料説明と詳しいヒアリングを行うのだ。
また、議員レクを実施しない場合は、官僚は想定問答というかたちで、関連で聞かれるかもしれない質問と答弁を自主的に作成する。質問が分からないため、多くの無駄な答弁資料を作成しなければならず、かなりの時間を要することになる。というのは、1つの質問につき、過去の政府見解等との整合性を確保した上で回答を作り上げるのに、約2時間かかるからである。また、総理質問の場合は、官邸のチェックが入るため、さらに午前4時過ぎまで作業が続くのである。
明け方まで霞が関で働いた官僚は、翌朝何時に起きるのだろうか。睡眠時間は1時間あるかないかだろう。というのも、委員会が午前9時開始であれば、所管大臣へのレクは朝6時に開始されるからだ。野党の部会に呼ばれることもある。
ひどい場合は、より残業時間が長くなる。平和安全法制を審議していた当時、ある野党の大物議員が深夜1時に官僚を呼び出して説明をさせ、3時半になって「質問内容は言わない」と回答したケースもあり、このときはほとんど徹夜となってしまったという。ある官僚は「質問内容を言わないなら『言わない』と早く言ってほしい。もし早く教えてくれれば、過去の質問からある程度は作れるのに……」とこぼす。
「弱者の味方のはずなのに……」
「国会の会期中は、すべてにおいて優先される国会対応が終わらないと役所同士のやりとりも始まらない。このため、答弁書の作成以外の通常業務も、必然的に朝方までかかることになります」(前出・経産省官僚)
週末に何もしないのに出勤を強いられるケースもある。月曜日に国会が開催される際に、土日に質問通告してくる場合である。当然、質問内容が届くまでは、いつもと同じように官庁で待機せねばならず、通告があればそこから答弁の作成が始まる。
冒頭で述べたように、課業時間後に質問を通告する議員は、野党議員が大半を占める。与党や無所属の議員は、おおむね前々日には通告している。複数の官僚から、「なぜリベラル政党が過労死を招きかねない残業を強制するのか。矛盾しているのではないか?」、「弱者の味方のはずなのに、女性や労働者を虐げているのは意味不明だ」という怨嗟の声が多く聞かれた。
確かに、長時間労働に強く反対している政党の所属議員が前夜に通告することによって、官僚たちには長時間労働を強いており、言行不一致に他ならない。