ルールは完全に形骸化している
だが、そうした国会の悪習を放置しておいてよいという理由にはならない。
「野党議員は国会の慣習を理由にする。しかし、そうした保守的な慣習こそ彼らの打ち破るべきものであり、そうした問題を放置しておいて何を言っているのか」(前出とは別の防衛官僚)
実は、国会の運営改革は「総論賛成・各論反対」で遅々として進んでいない現状がある。質問通告についても以前から問題視されており、1999年には与野党の国対委員長が「本会議や委員会での質問は、2日前の正午までに政府に通告する」と合意している。しかし、ルールとしては完全に形骸化している。
各党にさまざまな事情があるにせよ、結果として官僚の長時間労働は大きな改善には到っていない。少なくとも当事者として問題意識を持っているようには外面的には見えない。予算審議の期間中、筆者が深夜の霞が関や市ヶ谷を訪れると、“不夜城”のごとく煌々と明かりの灯ったビル群を見ることができる。そして、深夜の残業を終えて郊外まで帰宅する官僚を待つタクシーの行列も――。
質問通告時間はすべて公にすべきだ
それではどうするべきか。筆者は2つの改善案を提唱したい。
第1に、国会の在り方、特に“日程闘争”に重きをおいた国対政治の在り方を見直すことである。余裕を持って質問通告を行うことによって、官僚の長時間労働が是正されるだけではなく、大臣も「官僚答弁」ではなく、しっかりと勉強する時間が生まれる。政策論争が深まる土壌となるはずだ。国会運営は慣習の世界で、表からは見えないルールがたくさんある。外務委員長や国家公務員制度担当相として国会のルール作りに積極的に携わってきた河野太郎外務大臣は、「質問通告の遅れによって、大臣が本来の仕事に専念できず、官民合わせて多くの人の時間を振り回している」と指摘したうえで、「可能な範囲で合理的な国会運営にしていくべきだ」とかねてからの持論を主張している。与野党がしっかりと議論をした上で、ルールの一部見直しが求められている。
第2は、国会の透明性確保の観点からも質問通告時間及びレク実施時間はすべて公にするべきだ。そうすれば、上記のような改革を進めるインセンティブにもなるし、少なくとも国会議員の質問通告の早期化につながるだろう。
長時間労働の是正に象徴される働き方改革は、いまや国民的なコンセンサスとなっている。与野党の国会議員――特に労働者の味方を僭称ではなく、称する政党の方々――には、「隗より始めよ」の精神で取り組んでいただきたい。