1ページ目から読む
3/3ページ目

 西岡本人はのちに「あんなこと、狂人じゃなきゃできない」「僕が『乳首ドリル』をやるのは、言ってみれば北斎さんが『北斎漫画』を描いたのと一緒」「シリアスなものもやり、シェイクスピアもやり、日本の古典もやり、いろいろなことをやる。『どれが本物ですか』と言われても、全部本物なんです」(「オリコンニュース」2023年1月12日)と語っている。ちなみに西岡が“ネタ”をするのはこのときが初めてではなく、初登場だった2014年の『大脱獄24時』でもテツandトモと「なんでだろう~」を披露している。

「乳首ドリル」も稲垣がやった『キングオブコント』のネタもそうだが、『笑ってはいけない』を見ると、その年に流行したものがわかるという“側面”もあった。

 加えて、芸能人の“禊”の場でもあった。

ADVERTISEMENT

 不倫スキャンダルを起こしてしまった原田龍二は、2016年の『科学博士24時』でアキラ100%とともに全裸でおぼんだけの姿で「丸腰刑事」として登場。翌年の『アメリカンポリス24時』では、やはり不倫スキャンダルを起こした袴田吉彦と一緒に「変態仮面」に扮して登場した。

松本人志の脱糞で年またぎ

 番組後半は、芸人たちが意地を見せる番。上島竜兵や出川哲朗が後輩たちを引き連れ、体を張った“対決”をおこなった。彼らは大抵、褌一丁。まさに裸一貫になって、常軌を逸したゲームに身を投じる。この日この時間だけはコンプライアンスのタガが外れたような光景が映し出されていた。常軌を逸していると言えば、劇団ひとりも印象深い。思いっきりビンタを受けたり、リンチをされたり理不尽な暴力を受けたかと思えば、唐突に自らの卒業アルバムをビリビリにやぶったり奇行を連発。この日ばかりは、芸人も“品行方正”とは無縁でいられたのだ。

 年越しはカウントダウンするものという“常識”をぶっ壊したのも痛快だった。『笑ってはいけない』を見ていると、VTR中気づけば年越しをしている。ある年に至っては松本人志が脱糞しているタイミングで年をまたいだ。

2017年『絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』より引用

 毎回、エンディングには奥田民生の「愛のために」、斉藤和義の「やさしくなりたい」、ウルフルズの「バンザイ」、倖田來未の「愛のうた」といった名曲を、番組の名場面を振り返る歌詞に変えて歌われる。しかも、歌っているのは本人たちだ。それだけでもなんだか“いいものを見た!”と年越しを感じるのだ。

 ケツメイシの「涙」の替え歌ではこんな歌詞があった。

「5人の願望は単純にバカをしながら 笑って一つ歳取ること~♪」

 まさにひたすらバカなことをしつつ、“常識”や“品行方正”から背を向ける悪ふざけの極致のような番組だった。