とはいえ、名シーンもありました。“あすなろ抱き”と呼ばれるようになる、伝説のバックハグからの「俺じゃダメか?」です。
第2話で、掛居に彼女がいることを知ってもうあきらめると言っていたなるみを、後ろから強くやさしく抱きしめ、「俺じゃダメか? なあ、俺じゃダメなのか? 好きだ」と告白。
この作品はなるみと掛居のラブストーリーがメインで、けっきょくなるみにはフラれてしまう取手でしたが、『あすなろ白書』の名シーンとして真っ先にこの“あすなろ抱き”を挙げる人は多いはず。
劇中の取手はなるみと付き合った期間はあったものの、最終的には結ばれない当て馬でしたが、現実世界で取手を演じたキムタク株は高騰していたというわけです。
『あすなろ白書』の頃のSMAPは…
『あすなろ白書』の頃の木村は、人気上昇中のグループ・SMAPのエースとして頭角を現しており、イケメンアイドルとしての地位を築いていました。
また、本格的な連続ドラマデビューは前年(1992年)の一色紗英主演『その時、ハートは盗まれた』(フジテレビ系)で、一色演じるヒロインが片想いする先輩役を演じていました。このときのキムタクはちょっと不良っぽいクールなロン毛イケメンで、スクールカーストではトップに君臨するような役柄。
『その時、ハートは盗まれた』ではすでに、後々の『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』(2000年/TBS系)や、『HERO』(2001年/フジテレビ系)に通ずる“何をやってもキムタク”演技の片鱗を見せており、イケメン路線を突き進んでいたのです。
そして『あすなろ白書』後に木村が出演した連ドラは、1994年の萩原聖人主演『若者のすべて』(フジテレビ系)、1995年の浜田雅功主演『人生は上々だ』(TBS系)ですが、この両作での役柄も、おおざっぱに言えば似たようなキャラクターでした。言うまでもなく、この系統の役柄が“俳優キムタク”のメインストリームなのです。
つまりキムタクにとって『あすなろ白書』の“黒縁メガネ”キャラは、“不良っぽいロン毛イケメンキャラ”の間に挟まれたイレギュラーな役柄。当時の視聴者たちからすれば、人気アイドルグループのエースが、あえて真逆のキャラクターを演じているというギャップに注目していたというわけです。