〈あらすじ〉
広島・尾道で暮らす平山周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦は、東京で暮らす子供たちを訪ねて20年ぶりに上京する。長男の幸一(山村聰)の家族、長女・志げ(杉村春子)夫婦にも会うことはできたが、徐々に肩身が狭くなっていく。開業医の幸一も美容院を営む志げも毎日忙しく、両親の相手をする余裕がないのだ。周吉たちの東京見物に付き合い、優しい心遣いを見せたのは、戦死した次男の妻・紀子(原節子)だけだった。
周吉たちが帰郷してまもなく、尾道に暮らす末娘の京子(香川京子)から、「ハハキトク」の電報が東京に届く。
〈解説〉
公開当時から国内外で高く評価されている代表作。独特のロー・ポジションのカメラで淡々と捉えた日常の光景に、家族という共同体が永遠ではないことを映し出すヒューマンドラマ。
毎日映画コンクールで杉村春子が女優助演賞を受賞。英国映画協会が10年ごとに発表する「映画監督が選ぶ史上最高の映画」で、2012年には第1位(2022年は同率4位)に選ばれており、世界各国で多くのオマージュ作が作られている。
1953年公開の監督46作目。135分(モノクロ)。
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中野翠(コラムニスト)
★★★★★息子一家への一種の幻滅。それを口に出すこともなく、ほほえんで呑み込む両親。父親と母親の心情もまた、微妙に違っている。笠智衆は言うまでもないが、母親役の東山千栄子のおおらかさが救いに。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★★精緻な映像と平易で繊細な台詞を練り合わせて情感の圧倒的な深みに到達した秀作。画面の対角線上に人物を並べる構図。穏やかなペースの陰でゆったりとうねる物語の波。小津は観客を信頼していた。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆小津安二郎を名前しか知らぬ10代の昔に見た時は、デートだったせいか教育的指導を受けた気がしたが、親が逝って還暦を過ぎて見た今は、家族への想いと時の深さ、老いる面白さに感動やら感謝を。
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森直人(映画評論家)
★★★★★映画の美が横溢した偉大なスタンダードだが、歳月を経て観直すたび、残酷なまでの無常観が身に染みるように。同時に家族の絆の批評的な捉え直しなどは今っぽい視座で、射程の長さを改めて感じる。
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洞口依子(女優)
★★★★★実に恐ろしい家族という呪縛、崩壊。「とんでもない」「狡いんです」と原節子の唇から溢れる台詞に息をのむ。私的な裏話だが黒沢清作品始め多くの出演作で参考引用させて頂いたバイブル的作品。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
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