〈あらすじ〉
東京郊外、似たような小さな一戸建てが並ぶ一角。それぞれの家の妻たちはたわいもない噂話に花を咲かせ、夫たちは酒場で家族に言えない弱音を吐き、子供たちの間では、おでこを押すとオナラが出るという奇妙な遊びが流行っていた。
そんな中、林家の長男・実(設楽幸嗣)と次男・勇(島津雅彦)は、相撲中継を見るために、界隈で唯一テレビを持つ、近所から評判のよくない若夫婦宅に入り浸るように。それを母・民子(三宅邦子)に禁じられると、だったらうちにもテレビを買ってくれと駄々をこねるが、父・啓太郎(笠智衆)は「余計なことを言うな」と一喝。以来、2人は家でも学校でも一切口をきかなくなり――。
〈解説〉
戦後、庶民の生活にテレビや洗濯機などが普及し始めた頃の新興住宅地を舞台に、大人たちが子供に振り回される日常をコメディタッチで活写した。民子の妹・有田節子(久我美子)と、近くの団地に姉と暮らしている子供たちの英語教師・福井平一郎(佐田啓二)のもどかしい恋模様も描かれる。
1959年公開の第50作。94分(カラー)。
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中野翠(コラムニスト)
★★★★☆TVの急速な普及、そして戦争を知らない子どもたち。“庶民”のありかたの変化。子どもを持たなかった小津監督だが、案外、おおらかに受けとめていたんだなあ、と思う。喜劇への自信もあったのでは?
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆冗談好きで愛嬌があるのは、意外に見逃されがちな小津の特質。この映画ではそれが放流されている。三好栄子や高橋とよの芝居も楽しげだが、直球のギャグと幾何学的構図がたまに肉離れを起こす。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆次男坊の可愛さ、面倒な近所付き合い、親に反抗するにも引き籠り不可能な引き戸の日本家屋、出入り自由な構造だから何気ない可笑しみの演出が可能。玄関ひとつの団地住まいには未来の関係を予感。
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森直人(映画評論家)
★★★★★おならネタで有名。小津映画でいちばん肩の力を抜いて楽しめるモダンな軽喜劇。ジャック・タチに通じるとぼけた笑いと空間設計。小津の入門編としてもお薦めだし、マニアにはさらに味わい深い。
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洞口依子(女優)
★★★★★鮮やかな色調、河川敷と子供の時間は一見穏やかな糖衣に包まれた人間ドラマかと思いきやスリリング。出自が謎の人々の集合住宅、コミュニケーションの反復、テレビへの反論は現代にも突き刺さる。
- もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
- 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
- 料金の価値は、あり。★★★☆☆
- 暇だったら……。★★☆☆☆
- 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
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