ナイキとアディダスの戦略
まずはナイキです。ナイキは箱根駅伝をマーケティングの場として活用。選手たちが履いた新モデル「アルファフライ3」を、駅伝終了後の1月4日に発売しました。ところがこのアルファフライ3は、合う・合わないが如実に出るシューズだというのです。合う人にとってはぐんぐんとストライドが伸びるそうですが、合わない選手は旧モデルに戻しているようです。
続いてアディダスです。まず青山学院大はユニフォームの提供を受けながら、多くの選手がナイキを履いて記録を出すという、アディダスにとっては困った状況が続いていました。しかし今年は、アディダス着用者が6人と過半数を獲得。見事に「アディダススクール」が復活したと言ってもいいでしょう。
そしてもう1つのアディダススクールが國學院大です。この中で生粋のアディダス好きが平林清澄選手。厚底時代においても、薄底にこだわってきた平林選手は、薄底の感覚を残し、スピードの切り替えにも対応しやすい「アディゼロ タクミ セン」を愛用してきました。そして今回アディダスは箱根駅伝に合わせてエキデンコレクションを発表、新作として登場したのが「タクミ セン 10」でした。ところが箱根駅伝で平林選手の足元を見ると、前作の「タクミ セン 9」を履いているではありませんか! どのような経緯があったのか、気になるところです。
プーマと城西大の大躍進
プーマは大躍進しました。前回大会でも着用者が1人から7人に増えましたが、今年はなんと全選手中20人がプーマを履きました。ウェアもプーマを着用する城西大が総合3位と躍進したことも、これからの追い風になりそうです。
昨年は1名しかいなかったミズノは、このまま箱根から消えてしまうのではないかと危惧しましたが、今回は5人が着用。じわりとシェアを伸ばしました。
そしてOn、HOKA、ブルックスの3メーカーは、今大会で箱根駅伝本戦デビューを果たしました。
ちなみにレースではあまり見ることのないアンダーアーマーですが、昨年、関東学生連合で出場した慶應義塾大の貝川裕亮選手が着用。今大会では帝京大の尾崎仁哉選手が着用するなど、気になる存在になってきています。
カーボン入りの厚底シューズが定着した今、選手の足元を縛るものは何もなく、自分のフィーリングや走り、好みに合わせて選べる時代が来たということが、今大会では伝わってきました。そして、今年はパリ五輪が控えていますし、水面下でのメーカーの戦いはもう始まっています。今年から来年にかけて、それぞれのモデルがブラッシュアップされ、シューズ戦線がさらに面白くなることは間違いないでしょう。
構成/林田順子(モオ)