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 それにしても、圧倒的な存在感の立派な隧道だ。しかし、名称を示す扁額などはなぜか見当たらない。左右に出っ張る付柱の下の方には段差があり、その段を利用して多くの石仏が並べられていた。

 おそらくは、古くからこの道端に祀られていたものを、ここに集めたのだろう。この道が古くから街道として機能していたことを示す証であり、西洋を思わせる付柱に石仏が祀られている光景は、和洋折衷のようで少々微笑ましかった。

柱の脇には多くの石仏が並べられていた 

 隧道内に照明はないが、全長が短いので中まで日が届く。じっくりと見ながら歩いても、あっという間に通り過ぎた。隧道を出て振り向くと、入口と同じ光景があった。こんなに短い隧道なのに、とてつもない存在感を放っている。

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距離にして20メートルほどのトンネル

「隧道のことをお聞きしたいんですけど」と声をかけると…

 この隧道は、いったいなぜこんな意匠、構造になっているのか。いくら隧道を眺めていてもなかなか答えは見つからない。地元の方に話を聞きたいところだが、通行人は皆無だった。諦めきれず、人がいそうな家を求めて丘を登っていると、隧道に近い民家の前に1台の軽トラが停まった。

「人がきた!」

 千載一遇のチャンスを逃してはいけない。私は丘を一気に駆け下りて、住人に声をかけた。

「隧道のことをお聞きしたいんですけど」

 私が息を切らせながら話しかけると、「あまり詳しくないけど、それでもよかったら」と応じてくれた。