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白装束をまとった謎の集団、ダムの水底に沈むことになった村…稀代の道マニアが明かす「“酷道”417号線」で遭遇した“奇妙な出来事”

白装束をまとった謎の集団、ダムの水底に沈むことになった村…稀代の道マニアが明かす「“酷道”417号線」で遭遇した“奇妙な出来事”

2023/12/22
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 岐阜県大垣市と福井県南越前町を結ぶ「国道417号」は、1982年の国道指定から41年もの間、県境付近が分断されていた。その状態を解消しようと計画されたのが、「冠山峠道路」だ。

 国道を分断している冠山を4.8キロの長大トンネルで貫き、それに合わせて前後の道路を整備する。そうすれば、付近の交通状況は大幅に改善するとして、計画には両県の交流や観光に大きな期待が寄せられていた。

2002年頃の国道417号林道入口

 国道の開通はいつしか地元の悲願となっており、事業化から20年が経過した開通の日2023年11月19日には、沿道にお祝いののぼり旗や、開通を知らせる電光掲示が出されるなど、お祝いムードに沸いていた。

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現場にいた業者の方によると、この掲示が掲出されているのはこの日だけで、県内で1箇所だけとのこと

 その瞬間、私はといえば国道417号の路上で、福井県側で開通を待つ車列に並んでいた。

 開通時間を少し過ぎ、動きはじめた前の車に続いてゆっくり走ること約5分。真新しいトンネルが姿を現わす。扁額には“冠山トンネル”と刻まれている。41年間分断されたままになっていた冠山峠の真下を貫いたトンネルだ。

冠山トンネル岐阜県側

 真新しいコンクリートのトンネルは、おそろしいほど真っすぐで、まるで高速道路のようで非常に走りやすい。あっという間に岐阜県に入り、トンネルを抜けてしまった。

「冠山峠道路」開通の嬉しさと“複雑な思い”

 新たな道路が開通して嬉しい気持ちを覚える一方で、私は複雑な思いも抱えていた。トンネルを通過する5分間、頭の中で走馬灯が駆け巡ったほど、国道417号には数々の思い出があるのだ。

 冠山峠道路が開通する以前、国道417号の分断区間は林道で結ばれていた。

2002年頃の国道417号林道区間

 国道の代替路であった林道は、標高1041メートルの冠山峠を走り、対向車とすれ違うことができない道が延々と続く。落ちたらまず助からないであろう標高が高い地点でもガードレールがなく、路面には落石が転がり、舗装には大きな穴が開いていた。冬季は積雪により閉鎖され、夏季でも土砂災害で通行止めになることが多く、もはや交通路としては機能していないような状態だったといっても過言ではない。

落石の痕が生々しく残る

 また、かつては林道区間だけではなく、本線でさえも整備が進んでいなかった。岐阜県の山間部から福井県に入り峠を下るまで、1車線の狭い山道が延々と続いていたような状態だ。そのため、どこで林道に入ったのか気付かないまま峠を越えて、峠を下るといつの間にか国道に戻るという印象を受ける。国道417号はそんな道だった。