被害の大きかった石川県輪島市内では、それぞれの避難所のそばに複数の仮設トイレが建てられたが、絶対数の不足は否めない。トイレへのアクセスは被災地の深刻な課題といえる。
「現在は知人宅に身を寄せていますが、そこも断水してしまって水が流れないから避難所の仮設トイレを利用しなければなりません。でも、夜は怖いので、一晩中尿意を我慢することもあります」(30代女性)
トイレの問題はほかの支援と同じくらい重要
避難所生活を送る、別の30代女性もこう語る。
「夜、どうしてもトイレに行きたくなったら家族など誰かを絶対に誘うようにしています。夜の仮設トイレは扉を閉めると真っ暗になってしまうので、すごく怖いから」
災害時の女性支援に力を入れて活動してきたNPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」の代表理事の正井礼子氏が言う。
「被災した女性にとってトイレの問題はほかの支援と同じくらい重要なのです。トイレを屋内の明るい場所に設置することや女性専用スペースを作ることは、避難所で女性の安全を守るうえで、必要不可欠です」
被災者支援に関する国際基準に「スフィア基準」というものがある。支援にあたり、衛生、食糧、住環境や保健状態といった各分野の望ましい水準を定めたものだが、同基準はトイレへのアクセスを整えることも、被災者にとって欠くことのできない支援であると説く。だが、能登で避難生活を送る女性たちにとって、トイレへ至る道は険しくなっているのが現状だ。
ひとりでトイレに行けない――女性たちの悲痛な訴え
10代の女子中高生らは口を揃える。「夜、一人でトイレには行けない」。ある中学3年生の女子生徒はこんな話をする。
「ここでは不審者を見たことがないけど、他の避難所の周辺では出没したとSNSで出回っていました。不安です」