店内で長渕剛の『とんぼ』が流れはじめ…
筆者が店内のBGMを気にしていたら、店員の方が気を遣ってくれたのか、音楽を変えて長渕剛の『とんぼ』を流し始めたんですよ。それを聞きながら、岐阜の南米系のバーで長渕の歌を合唱したことを思い出しました。
そのお店で、日系ブラジル人の奏者が筆者に「君、ブラジルの曲ばかりでわからないだろう。日本の歌を歌おう」と言いだし、『とんぼ』をギターで演奏しはじめ、そこにいる全員が『とんぼ』を大合唱しはじめたんですね。もちろん筆者も歌いましたが、未体験の世界でした。
話を鶴見に戻します。「パライゾ ブラジル ヨコハマ」でも長渕剛の音楽に変えられ、『とんぼ』が流れ始めたときは「また長渕か……! なぜ長渕なんだ……!」という思いが駆け巡りました。日本語を話せそうなお客さんが来た時に「なぜ南米系のお店で長渕剛の曲を流すのですか?」と聞いてみました。すると、こんな答えが返ってきたのです。
長渕剛の『とんぼ』は思い出の歌
「長渕の『とんぼ』が流行った当時、南米で育った日系人がたくさん日本に働きに出ていたので、みんなの思い出の歌なのですよ」
なるほど。「じゃあ長渕が南米でツアーをしたことがあるわけではないんですね?」と重ねて聞いてみると、店員さんとポルトガル語で確認し合ったあと、「そういうわけではないです」と答えてくれました。
別の日系人の方に聞いてみると「当時、日本からVHSの前の……ベータ(ベータマックスのこと。家庭向けビデオテープレコーダ)で紅白歌合戦の録画が送られてきていたので、それを見てたんです。紅白って毎年同じ曲を歌うじゃないですか? だからみんな『とんぼ』とか『酒よ』とか『津軽海峡冬景色』を何回も聞いて覚えたんですよ」と言っていました。そういう背景もあって、よく長渕剛が流れるのかもしれませんね。
ペルー中華料理「Chifa(チーファ)」を食べて大満足
「パライゾ ブラジル ヨコハマ」を出たあとは、ペルー料理屋の「エル・パイサノ」に行きました。口コミで、海鮮食材豊富なマリネ「セビーチェ」と揚げワンタンが絶品だ、という声があったので、ぜひ食べてみたかったのです。
セビーチェは店によっては辛いのですが、「エル・パイサノ」は辛さがほどほどで、海鮮が盛りだくさんでした。揚げワンタンは、町中華ともガチ中華とも違う「Chifa(チーファ)」と呼ばれるペルーの中華料理で、こちらも大満足。
昔、福建省あたりの中国人がペルーに移民したときに、彼らの言う「チーファン(吃飯。飯の意味)」が転じて、ペルー中華料理が「Chifa」と呼ばれるようになったそうです。「エル・パイサノ」では、揚げワンタンのほかにもペルー中華料理が食べられます。鶴見には、ほかにもペルー料理屋があるので、好きなお店を選べるのが素晴らしい。
皆さんも、歴史がつくった逸品を食べて飲むために、鶴見へ行ってみませんか?
写真=山谷剛史