「住みたい街ランキング」上位の街の顔ぶれは時代とともに少しずつ変わり、これまでに「3つの波」がありました。第1トレンドは「おしゃれ」、第2トレンドは「再開発」。そして第3の波とは? SUUMO編集長の池本洋一さんインタビュー2回目です(全3回インタビュー。#1が公開中です)。
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「穴場だと思う街ランキング」上位は北千住、赤羽、蒲田、そして池袋
池本 前回は、第3トレンドの「再開発ではない形で街が良くなっているエリア」についてちょっとお話ししました。その代表格が池袋。それから赤羽、北千住、蒲田などの街です。
池袋にはよく取材で行くんですけれども、豊島区が財政的に厳しかったこともあって、池袋はビッグターミナルの中で区画整理がかなり遅れた街なんです。新宿の西口に高層ビルがどんどん建設されても、サンシャインシティ以降、池袋は最近まで再開発による高層ビルが建たなかった。でもこれは結果オーライだったと思うんです。池袋には「足元の商店街」がまだ残っていて、それぞれのお店を地元の人たちが経営しています。そのオーナーさんたちが、女性が1人で歩きにくいような治安の悪さを改善するために、行政と一緒に過度な客引きを防止する呼びかけなんかを行なっていて、地元の人が池袋を愛しているのがよく分かるんですよ。足元に昔ながらの商店街を残しつつ、若者や若い家族が望む場所を再開発だけに頼らずにリノベーションで作っていくという合わせ技が、第3のトレンドなのです。
北千住は象徴的で、商店街を一本入った路地裏の古い建物がおしゃれ系カフェやクラフトビールの店などにリノベーションされている。 そしてそんな街には「キーマン」がいるんですよ。面倒見のいい先輩カフェオーナーがいて、若い人たちが「お店を開きたいんですけど」と相談したら、「ここ空くらしいよ」という形でサポートしてくれたりする。こんな形で点を面に広げていける街は、どんどん支持されていくと思います。
―― 「第3の波」グループが今後さらにランキングを上げてくる可能性があるわけですね。
池本 例えば蒲田。町工場や雑然とした雰囲気の酒場が軒を連ねる“ザ・昭和の街”の印象がありますが、最近はマンションがどんどん増え、京急蒲田駅周辺も再開発されてすごく便利になりました。共働きサラリーマンカップル、ファミリー層という新しい住民のボリュームが大きくなってきて、彼らをターゲットとしたお店なんかも増えています。でも「雑然、昭和」の印象は今もあるから、家賃安めな物件も探しやすい。「雑然×交通利便×多彩な店=コスパ高い」。これが新しい街選びの方程式なのかもしれませんね。