――ではお手洗いは、共用のトイレを使用していたのですか。
蒼川 そうですね。看護師さんに「今からトイレに行きます」と報告して同行してもらって、吐かないかどうかすぐそばで見守られながら……。
そういう生活が続いたこともしんどかったのですが、精神病棟なので、夜中になると患者さんが声をあげながら廊下を歩いていたりする環境に、当時の私は適応することができませんでした。「早く退院したい」という気持ちが強まり、目標体重に届く前に、2週間くらいで退院させてもらうことになりました。
退院後はどのように食欲をコントロールしたのか
――退院したとき、体重は何キロくらいまで戻っていましたか。
蒼川 40kgか、41kgくらいだったと思います。早く退院したかったので、母がサンドイッチを作ってきてくれたりしたときには、これ見よがしに食べて「ちゃんと食べられるから、退院できるから」というのをアピールしてましたね。与えられるものはひたすら食べる、という。
――拒食症の症状が落ち着いたのは、それくらいからですか。
蒼川 そうですね、退院してからはまず「もう入院はしたくない」というモチベーションがあったのと、あとは勉強に打ち込むことで食欲をコントロールできるようになりました。私の場合、拒食症を根本から治療していたわけではなかったと思うので、衝動みたいなものがなくなることはなくて。勉強をストイックにやることで、ごまかしながら共存するようにしていましたね。
そのとき勉強をがんばったおかげで指定校推薦で大学に進学できましたが、それからまた拒食と過食を結構くりかえしてしまって。なので結局、摂食障害は中学2年生から始まって、大学2年か3年生くらいまで続きました。
撮影=石川啓次/文藝春秋