遊んでみれば世界で絶賛される素晴らしさがわかる…と言いたいところだが
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の受け入れ方が違う以上、『バルダーズ・ゲート3』に対する態度が大きく異なるのは当然である。とはいえ、ビデオゲームなのだから遊んでみれば世界で絶賛される素晴らしさがわかる……と言いたいところだが、一筋縄ではいかない。
そもそも『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をある程度は知っていることを前提としたゲームなので、なんとなく遊んでもわからない可能性が十分にある。特に固有名詞は説明なしで出てくることが多く、各々で調べる必要があるだろう。
そして、本作は選択肢が多いことが大きな特徴となっている。ストーリーは大筋こそ決まっているが細かな分岐が多く、単なる会話でも肯定・否定・皮肉・説得・暴力などバリエーションが豊富だ。クマと人間のロマンスシーンもあり、エンディングは1万7000通りもあるという。
バトルも自由で、正面から戦うと勝てない敵もタルや宝箱を動かして足止めすれば簡単に勝てたり、たくさんある呪文をうまく活用できれば容易に相手の弱点を突くことができる。こういう選択肢が豊富な状況は、言い換えれば何をしていいのかわからない可能性を生み出すということでもある。
斜め見下ろし視点(クオータービュー)も日本ではそこまで馴染みがないだろう。レトロな日本のRPGはたいてい真上から見下ろすような視点(トップビュー)であり、これは情報が整理されているメリットがある。
そもそも、『ドラゴンクエスト』は海外のRPGをわかりやすくした点が重要だと考えられている。どんなに優れた文章でも理解されなければ意味がないように、わかりやすさは重要な要素のひとつであり、これが日本におけるRPGのひとつの特徴といえるかもしれない(当然ながら、日本のRPGでも挑戦的なものはたくさんある)。
昨今はスマートフォン向け基本プレイ無料のゲーム(いわゆるソーシャルゲーム)が大きな支持を集めており、こちらにおいてRPGという言葉は「キャラクターやアイテムの収集・育成」という意味合いが近いし、そういう文脈がどんどん広がっていると感じている。日本と北米ではRPGがどういうものを指すのかも異なるし、これから先どんどん意味合いが変化していく可能性もあるわけだ。
要は、「海外で超人気、大賞獲得のRPG」といっても日本のゲーマーが考えるものとはかなりの差があり、これこそ『バルダーズ・ゲート3』が日本で売れない理由ではないか。呼び方が同じでも、中身はかなり違うのである。