距離が近い関係だからこそ、家族間のコミュニケーションが難しいものになってしまうことは決して珍しい話ではない。では、どうすればお互いにストレスを抱えず、円滑な交流ができるものなのか。そもそも、そんな万能薬はあるものなのか。
ここでは、教育学者の齋藤孝氏がコミュニケーションに悩む人へ向けて書き上げた『上手に距離を取る技術』(角川新書)の一部を抜粋。家族間の理想的な付き合い方の一例を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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干渉してくる親にどう対処するか
男女関係も難しいものですが、家族の距離感は家ごとに大きく異なるため、非常に悩まされる人も多いものです。
往々にして子どもの側は、親の質問を詮索と捉えがちです。
交友関係に干渉してくると感じる親に対しては、まずは明るく答えてみましょう。
親は単に子の答えを聞いてみたいだけかもしれませんし、子どもが幼い頃に質問をしていた習慣が残っているだけかもしれません。話題を増やしたいだけかもしれません。会話のきっかけを作りたいだけで、詮索ではないこともあります。
質問には別のことを答えてもよいので、ともかく会話をしてあげれば、たいていの親は納得します。
別の話題をふることで、詮索癖のある親と距離を取ることができます。
また、相手が納得する定番の答えを準備しておくのもよいでしょう。
稽古事など、学びの場を外に持つ
お稽古事など、自分自身の学びの場を外に持ち、常にそのことに置き換えて回答をするなどの工夫によって、干渉をかわしやすくなります。
通いものは、人の気持ちを明るくしてくれます。それをやっている限り、スケジュールにもなります。昭和中期までは「親を継ぐなら、学問など不要」といった風潮もありましたが、現代では、勉強したいという意欲を見せる人に反対する雰囲気は、だいぶ減っています。
図書館通いでも構いません。自分自身を向上させる学びの機会を設定することで、親と物理的な距離を取りましょう。親の側に勧めてみてもよいでしょう。