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 冒頭の電子版の速報が配信されたのが、同日の22時21分だから、最初の電話から1時間ちょっとで記事を書き上げ、裏を取ったということになる。その速さもさることながら、今読み返しても記事の中身が正確であることに改めて驚かされる。

「でも最初のころは、いろんな噂というか、今思うと全然違う話も混ざったりしてたんです。OSOを撃ったとされる日にちがズレていたり、撃たれた場所が違ったり……それを整理して、だんだん事実を絞っていったという感じですね」

岩崎さんの取材ノート

「これはちょっと変です」

 一方で「クマ担」リーダーだった内山岳志は、OSO18駆除の一報を東京で聞いた。2023年春に東京報道センターへ異動になっていたからだ。

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「なので僕は岩崎たちのスクープにほとんど関与してないんです」と語る内山だが、OSO18については、襲撃発生当初から並々ならぬ関心を持って取材してきた。

 OSO18による最初の牛の襲撃は2019年7月16日、釧路管内標茶町オソツベツ地区の牧場で放牧中の乳牛1頭が襲われ、死亡した。翌日の北海道新聞は〈クマに襲われ乳牛死ぬ〉と短いベタ記事で事件を報じている。

2019年8月に撮影されたOSO18と見られるヒグマ。左の尻に傷痕がある(標茶町提供)

「その記事を見て、『あっ』と思って。今までこんな事案というのはなかったよな、と」

 道東の中標津支局に在籍したこともある内山は、現場周辺に土地勘もある。

「あの辺りは『酪農大国』で、それこそ人の数より牛の方がはるかに多い地域です。それだけの牛がいるのに、僕が知る限り、クマに襲われたという話は聞いたことがなかった。放置してあった牛の死骸に付いちゃった(=食べに通ってくる)というケースを噂で聞いたことはありましたが、積極的に食害、食べるために襲うというのは、普通じゃない」

 最初の現場となった弟子屈支局の記者は、内山がよく知る先輩でもあったので「これはちょっと変です。危ない例だと思います」と注意を促した。本来であれば、すぐにでも自分で現地に入りたいところだったが、「クマ担」といえど、クマの記事だけやっているわけにもいかない。「別件でややこしいのをいくつか抱えていた」(内山)ため、OSOについては現地の知り合いに最新情報を聞きながら、事の推移を見守るしかなかった。

 その間、内山が当初危惧した通り、OSOによる被害はどんどん拡大していった。