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ロッキードを書くことで「今」が見える、「昭和」を総括できると思った

 なぜ真山さんは、このタイミングでロッキード事件を書こうとしたのだろうか。

「ロッキード事件については、すでに100冊以上も関連書籍が出ていて、膨大な資料も発表されており、報道も尽くされている。『なんで今さら書くの?』と言われたこともあります。でも私は、『ロッキード』を書けば、今が見えてくる、そして昭和が総括できる、と思い、取り組むことにしました。

 私たちはまだ、昭和を総括できていません。

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 振り返ると、平成の世は昭和の残り香やバブル崩壊の負債を一手に引き受けざるをえなかった。だから『失われた30年』と呼ばれる所以です。それが令和になって、やっとリセットできたのではないでしょうか。

 さらにいえば、キッシンジャー、池田大作さん、中曽根康弘さんなど、昭和の怪物と言われた人が、ほとんどすべて鬼籍に入った。これは、まさに昭和が歴史化された、ということだと思います。

 今こそ、戦後から昭和64年までに起きた出来事をしっかり見ていくべきタイミングだ、と感じています。

 この本の取材・執筆に、2年の歳月をかけました。膨大な資料を総当りするだけでなく、ご存命の関係者にはとにかくアプローチをして先入観なく話を聞き、臆せず疑問をぶつけ続けることにして、徹底取材を行いました。雑誌連載を続けていく中で、証言を名乗り出る関係者も現れ始めました。そういった新証言も数多く盛り込まれています。

 初めて書いたノンフィクションです。とにかくファクトにこだわって、深掘りをしていきながらも、ときには小説家としての想像力、妄想力も駆使して、この事件の核心的な部分に迫ったつもりです。ぜひ多くの読者に手にとっていただいて、それぞれにこの事件と昭和という時代に思いを馳せていただけたら、と思っています」

(その2につづく)

ロッキード (文春文庫 ま 33-5)

ロッキード (文春文庫 ま 33-5)

真山 仁

文藝春秋

2023年12月6日 発売