失敗しても「ナイストライだったね」ですぐ切り替える
けんすう 今までの慣習とかを中途半端に抱えて捨てきれないから、例えば「メールじゃなくてSlackにしましょう」と言ってもさっぱり移行が進まない、みたいな話はよく聞きます。もったいないですよね。
リクルートという会社は、いろいろなことを簡単に変えられる文化で、10数年前に、全部分社化してホールディングス制にしたんですが、「なんか違うね」と言って、再び統合。普通に考えたら、会社の分割・統合は死ぬほど面倒なことなのに「違ったね」ですぐに軌道修正できる。
あるいは「ホットペッパーグルメ」という有名なサービスがあって、一度名前変えたんですよ、「ホットペッパー FooMoo」って。多くの人は名前変えないほうがいいなと思っていたと思うんですけど、当時の担当者が「変えた方がいい」というのでやってみたらダメだったから、さっと元に戻して。そういう時みな「やっぱりダメだったじゃん」と口にしたりせず、「ナイストライだったね」で切り替えられるのが素晴らしかったです。
牛尾 素敵な文化ですね。
けんすう 僕は日頃、一度決めた方針に固執せず、その場でどう対応するかの方が大切だと思っていて、アメリカ企業のような、早く取り組んで、早く失敗して、早く修正する「Fail Fast」の法則じゃないけど、変化への「対応力」こそが圧倒的に大事。
それは企業文化だけでなく個人のキャリア設計に関してもそうで、たくさんの若者たちから相談を受けてきましたが、自分の人生こうだなと決めてプラン通りにするなんて基本的に無理ですよね(笑)。キャリア設計にそって頑張るのもいいけど、状況はめちゃくちゃ変化していくから、そこに対応できるように備えておくのがいいと思っています。牛尾さんならキャリアに悩む若い世代にどんなアドバイスをしますか?
つらい思いをして仕事をするなんてナンセンス
牛尾 例えば、組織文化とのアンマッチを感じていたりするなら、これはもうup to you(あなた次第)。会社に残って頑張りたいと思うならそれもいいし、こんな上司の相手なんかしてられるかって思ったらさっさと辞めたらいい。自分の心に問いかけてみて、どちらが自分の好みかで、あまり気にせずにジャッジしたらいいと思う。それが間違っていても修正したらいいだけだし。
けんすう 僕だったら転職しますね(笑)。組織の環境を変えるのもいいけど、やっぱりすごく時間がかかるし、そこに10年いたいと思えるか次第ですね。例えば、新卒3年目くらいなら、いろんな会社を見て自分に合う所を探した方が早いと思います。
牛尾 それも賢い考え方だと思います。あと、もうひとつアドバイスがあるとすれば、外のコミュニティをもつといいということ。社外のコミュニティでいろいろな人に会うとより大きな視点が得られて、悩みを相談できたり判断がうまくできたりしますから、超オススメです。
最後に言いたいのは「ハッピーになってくれ」それだけですね。自分がつらい思いをして仕事をするなんてナンセンス。人は幸せになるために働くのだから「君がハッピーだったら、すべてそれでOK!」。
けんすう いいアドバイスですね! 今日は刺激的なお話をありがとうございました。
牛尾 こちらこそ、ありがとうございました。
(誠品生活日本橋にて)
牛尾剛(うしお・つよし)
1971年、大阪府生まれ。米マイクロソフトAzure Functionsプロダクトチーム シニアソフトウェアエンジニア。シアトル在住。関西大学卒業後、大手SIerでITエンジニアとなり、2009年に独立。アジャイル、DevOpsのコンサルタントとして数多くのコンサルティングや講演を手掛けてきた。2015年、米国マイクロソフトに入社。エバンジェリストとしての活躍を経て、2019年より米国本社でAzure Functionsの開発に従事する。著作に『ITエンジニアのゼロから始める英語勉強法』などがある。ソフトウェア開発の最前線での学びを伝えるnoteが人気を博す。
けんすう(古川健介)
1981年生まれ。起業家、エンジェル投資家、アル株式会社代表取締役。浪人時代に受験情報掲示板「ミルクカフェ」を開設。在学中に、レンタル掲示板「したらばJBBS」を運用するメディアクリップの社長に就任。同システムは後にライブドア社に売却。新卒でリクルートに入社後、起業してハウツーサイトの「nanapi」をリリースし、2014年にnanapiをKDDIへM&Aされる。翌2015年にKDDI傘下に設立されたSupeship社の取締役に就任。2018年にアル株式会社を創業、マンガ情報共有サービス「アル」を手がける。現在、きせかえできるNFT「sloth」、成長するNFT「marimo」などを手がけている。