実写版「ONE PIECE」の場合はNetflixアメリカ本国発の英語シリーズとして作られているため予算規模は大きく、制作環境も異なる。単純に双方を比較できないが、実写ドラマの観点からみると、「ONE PIECE」にはあって、「幽☆遊☆白書」には足りない部分があった。それは生身の役者が演じることによって生まれる意外性だ。
例えば、実写版「ONE PIECE」では主要キャラクターの「ナミ」に現実世界に存在するようなリアリティ性を持たせている。
容姿こそ原作のイメージとは離れているものの、「ナミ」というキャラクターの本質を理解しやすいものにしていた。製作側の意図的なものだというから、リスクがありながら最適な表現を追求した、攻めの姿勢が潔くも感じた。
実写ドラマとして勝負するには原作ファンだけでなく、ドラマ好きも囲い込むようなアレンジ力が時には有効であることを証明したように思う。
実写版「ONE PIECE」は全世界配信後、週間グローバルTOP10(英語シリーズ)1位を3週連続で達成し、これまで6300万時間以上視聴されている。このまま伸びていけば、Netflix歴代人気TOP10入りも見込めそうだ。
唯一の日本人俳優として起用されたゾロ役の新田真剣佑がこの作品をきっかけに世界的に人気を集めるなど話題も作り、これも予想以上のこと。こうした意外性が実写版「ONE PIECE」にはある。
ドラマ作品としてはまずまずだが
実写版「幽☆遊☆白書」はと言うと、何よりVFX技術による映像表現で十分に挑戦しているが、それはドラマ作品として成功するために必要な条件である。
攻めてほしかったのは、主役の「浦飯幽助」と人気を二分する「蔵馬」や「飛影」の描き方だ。現在放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」で登場シーンからインパクトを残すほどの本郷奏多なので、彼の俳優としての実力をもっと引き出しても良かったのではないかと思ってもしまう。