「顔見せしているだけでなく、コスプレしている嬢の数と衣装の種類が圧倒的に多い。まるで『コスプレ美人のショーウインドウ』だ」

 ナゾの街「飛田新地(大阪市西成区)」に男たちは何を求めてやってくるのか……。その妖しい別世界の様子を風来堂による新刊『ルポ 日本異界地図』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

ナゾの街「飛田新地」には何がある? 写真は現在の飛田新地にある「鯛よし 百番」。歴史的建築物として国の登録有形文化財に登録されている(『ルポ 日本異界地図』より)

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美女が顔見せで客を誘う色街

 飛田新地は「江戸時代にタイムスリップしたような雰囲気がある街」であり、「平穏な日常生活とは別次元にある場所」だ。

 飛田新地の特異性は「和風の建物の玄関の奥で、若くてかわいい女の子が顔見せしていること」である。日本に残る「ちょんの間街」で顔見せしている場所は、いまや飛田新地と松島新地(大阪市西区)、滝井新地(大阪府守口市)くらい。メイン通りと青春通りに並ぶ料亭の入り口に座っている女の子の質は、ほかの「ちょんの間街」とは比較にならないほど高い。

 料亭の玄関の戸は開けっ放しになっており、玄関の奥に座る女の子の艶やかな姿を客は路上から見放題。店頭には客引きのおばちゃんが座り、道行く男たちに手招きをしたり声をかけたりして、この世の天国へと誘惑する。

 女の子のなかにはセーラー服やナース服、サッカー日本代表のユニホーム、花魁風の和服、着物、ミニスカポリス、巫女、メイド、チアガール、バニーガールのコスチュームなどを着て客を誘っている子もいる。顔見せしているだけでなく、コスプレしている嬢の数と衣装の種類が圧倒的に多い。まるで「コスプレ美人のショーウインドウ」だ。

 客となる男たちはキョロキョロと目移りさせ、嬢を見定めながら道を歩く。ゴールデンウィークやお盆、年末年始になると、夜のメイン通りと青春通りは欲望に満ちた男たちであふれ返る。

 客の数が多いうえ、誰もが横をチラチラ見ながら歩くので、すれ違う際に肩と肩がぶつかる。全国の風俗街を見渡しても、これだけ路上に人の姿があるのは飛田新地くらいなものだ。

 最近は、ほかの風俗街では人の姿がほとんど見られない。風俗遊びは事前にネットで下調べをして店を決めてから行くのが一般的となっており、街をブラブラしながら店を決める客の姿は皆無である。事前調査や予約をせずに風俗店に飛び込みで入る客というのは昔に比べれば格段に減った。最寄り駅や近隣から店の送迎車を利用するケースも多い。