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「格差」が付き始めた
衛星都市の間で「格差」が付き始めたのが、多くの街で住民の高齢化が始まった2000年代後半からだ。大都市に通っていた会社員の多くは、会社という組織の中では有能であっても、地域とのつながりが希薄であれば、定年退職後に社会や地域に貢献できず、あるいはしようとせず、毎日を生活のための消費を続けるだけの存在になった。生産活動をしない人が増えると街の成長は限定的となる。
また平均余命の伸びは、相続という家族の大イベントが遠のき、衛星都市で育った子供たちは夫婦共働きのライフスタイルの変化を背景に都市中心部に流出した。結果として衛星都市で活気を保ち続けるところは減り、駅前にあった百貨店は撤退し、商業店舗の衰退が目立つようになったのだ。
神奈川県を例にあげると…
東京や大阪といった大都市に居住する動きが顕著になるにつけ、大都市だけに依存してきた衛星都市は、「寝るだけ」の都市から「一日中寝てばかり」の都市に衰退している。
神奈川県を例にあげると、かつて人口40万人以上を誇り、街には活気があふれていた横須賀市は、現在は人口の減少、高齢化に悩まされている。三浦半島の中心部にあって、台地を切り開いてニュータウン開発を行った1960年代、70年代は、東京に通うサラリーマンで賑わった街だったが、ここで育った子供たちは、丘陵地帯にあり平地が少なく、駅からもバス便の街には戻ることなく、高齢化が一気に進んだ。人口は減少が続き、2018年に40万人を切り、現在は37万8000人に落ち込んでいる。