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“湘南ブランド”が浸透した藤沢市にあって、“高齢化”に悩む横須賀市にないもの

首都圏「衛星都市」の“格差”

2024/02/06
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湘南ブランドが浸透し成長を続ける藤沢市

 一方で同じ県内でも藤沢市は、湘南の中心的な都市として成長を続けている。東海道線や小田急線で横浜や東京につながる交通利便性に加え、海と太陽をテーマにした湘南ブランドが浸透。北部には大企業の工場を多く抱え、市財政も豊か。東海道線「辻堂」駅前での複合開発で、オフィス、ショッピングモール、マンションなどが整備され、人気の街となっている。実際に2020年にSUUMOが発表した「住民に愛されている街」ランキングでは第1位の片瀬江ノ島を筆頭に、鵠沼(8位)、鵠沼海岸(10位)、湘南海岸公園(26位)など市内各エリアが上位にランクインしている。

藤沢駅から小田急江ノ島線で南に行くと、片瀬江ノ島だ(著者提供)

街の特徴と生活が結びつくことが必要

 神奈川県内では藤沢市や茅ヶ崎市などの湘南エリアが人を集めるのに対して、横須賀市や小田原市のように人口減少、高齢化に悩むところと明暗が分かれつつある。横須賀市なら米軍基地、小田原市なら城下町とそれぞれ立派な特徴があるのだが、その街の特徴と生活が結びつかない点で、「海」や「太陽」を見事にブランド化して食品や物販などに加え、観光を振興して明るく開放的なイメージを作り上げている藤沢市や茅ヶ崎市との差は開く一方なのだ。

出典:藤沢市、横須賀市(2025年以降推計値、著者作成)

 東京一極集中のなか、これからの衛星都市は自らが輝いて人を呼び込むことを行わない限り、街としての発展は望めない。衛星から脱皮し、“惑星”に、そして自らが輝く“恒星都市”への脱皮が求められているのだ。そしてこうした脱皮、成長を繰り返していく街にある不動産は今後も価値を保ち続けていくいっぽうで、人を集める魅力に欠ける「一日中寝てばかり」の街には今こそ人を集めるための知恵と発信力が問われているのだ。

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牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

“湘南ブランド”が浸透した藤沢市にあって、“高齢化”に悩む横須賀市にないもの

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