「大変なところに来てしまった」――そこに訪れた男性たちの誰もがそう思う、滋賀県のナゾの歓楽街「雄琴」とは、どんな街なのか?

 現在の様子から、雄琴が日本有数の歓楽街になれた理由までを、風来堂編著『ルポ 日本異界地図』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

滋賀県のナゾの街「雄琴」には何がある? 写真は1971(昭和46)年2月6日に初登場した『花影』(『ルポ 日本異界地図』より)

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大人のディズニーランド「雄琴」

 雄琴は滋賀県大津市の市街地の北方、市の中央部にあり、日本最大の湖・琵琶湖の西岸にある地域だ。古くから温泉地として栄え、1970年代になると、すぐ南に隣接する苗鹿三丁目にソープが続々とオープン。新興のソープ地帯として全国的に知られるようになった。

「大変なところに来てしまった」。初めて雄琴のソープ街を訪れたとき、多くの男たちが一様に思うことである。店舗はどこも大型のもので、その外装は奇想天外、珍奇無類、空前絶後。西洋の古代の神殿や宮殿を模したものから和風の城や屋敷や竜宮城、さらには学校やアーリー・アメリカン風のコロニアル様式の邸宅のような店もある。

 店頭には裸女の金色のオブジェが飾られていたり、看板に大きな人魚やバニーガールが描かれていたりと装飾にまったく統一感がなく、カオスっぷりは半端じゃない。まるで不思議な「おとぎ話の世界」、ちょっとエッチな「大人のディズニーランド」に迷い込んだような錯覚に陥るのだ。

 しかし、これだけなら東京・吉原や川崎・堀之内などのソープ街にも当てはまる。ほかの色街と異なる雄琴の最大の特異性は「自然とソープが共存している」ことにある。

 雄琴は比叡山のお膝もと、近江富士(三上山)を望む湖畔の景勝地に位置しており、晴れた日には比叡山に連なる雄大な比良山地の姿を見ることができ、東に目を移せば、清明な水をたたえた琵琶湖の風景が広がっている風光明媚な街だ。

 苗鹿三丁目のソープ街の周囲には田んぼや畑が多々ある。大型の店舗が数十軒集まるソープ街で、これだけ山紫水明で自然豊かな場所にあるのは雄琴だけである。

 そして、雄琴のソープ街のもうひとつの特異性は「陸の孤島」となっていることだろう。国道161号を南から北上していくと、田園風景のなかに忽然とソープ街が出現する。ソープ街は完全に集中型で、なかに入るとソープがところ狭しと集まっている。