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「役者は向いていないんじゃないか」と思っていた

三島 演技をする時に、例えば2つのアプローチがあると言われてます。1つは、自分の過去の感情を掘り起こして自分を見つめることから始めるタイプで、もう1つは、想像でその感情を生むタイプです。

 自分の今までの人生と関係なく、生きてきた年齢も関係なく、とにかく役の人間を想像する。それで想像したときにどういう感情が自分の中に生まれるのかを見つめていく。

 私はどちらかと言うと後者のアプローチのほうが表現の可能性が広がると思っています。というのも、たとえば悲しい場面で自分の過去の悲しい経験を思い出しても、それは別の悲しみですからね。

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前田 そうですよね。見ているほうとしてもなんだか泣こうとしているなというのがわかりますよね。私はそれができない。昔の感情が思い出せないから、実は役者には向いていないのではないかと思っていました。

三島 向いていますよ。過去に遡るより、想像できること、想像して感じることのほうが役者さんに必要な要素かなと。

前田 そうなんですか、よかった。

三島 『エイリアン』で知られるシガニー・ウィーバーは、自分の感情を細かくストックしていて、身体のどこを触るとその感情を引き出せる、というように訓練しているらしいです。ボタンを決めていて、眉毛を触るとこの感情になる、手の甲を押すとあの感情になる。相手役の人とお芝居をセッションする前の準備として、その感情になってならしておくのだそうです。

前田 すごいですね。でも、ボタンを間違えたら大変ですよね(笑)。そのつもりじゃないのに違う感情が出てきちゃったとか。

三島 笑っちゃいけないところで爆笑したりすることになる(笑)。

前田 監督は、反応するということを大事にされていますね。

三島 はい。芝居は1人で作るわけではないですし、人はいつも何かの作用を受けて感情が生まれるわけですから、相手役の感情にどう反応していくのかということが大事で、結局、大事なのはセリフではないんですよね……って、こんなこと言ったら脚本家の先生に怒られるかもしれない(笑)。ごめんなさい!セリフも大事です。

前田 (爆笑)。

三島 結局、芝居というのは言葉も大事ですが、どういう感情を受け取って、どうリアクションするかということの繰り返しなのではないかと思っています。前田さんはそれがベースとしてずっとできているんですよ。

前田 では、役者を続けてもいいでしょうか。

三島 続けてくださらないと、映画界が困りますね。

photographs: Asami Enomoto
styling: Yusuke Arimoto(7kainoura/Maeda)
hair & make-up: Yurika Ichihashi(Mishima),  
Riho Takahashi(HappyStar/Maeda)