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 結局はお金だけで繋がっているいびつな絆。信用など一切なかったのだと思う。私は、危険な状態だということをしっかりアピールした上で、ひとまず明日の朝一で事務所の電話やパソコンなどを処分すると決めた。そして反対した従業員には、時間を見計らい、張り込みをしているかもしれない警察の動きなども見ながら昼前でもいいから事務所に来て手伝って欲しいと伝えた。渋々ふてくされた表情を浮かべながら、納得のいかない様子でメンバーはわかったと返事をした。

 翌朝、私ともう一人のメンバーは事務所へ向かった。周りに警察が張っていないかどうかを確認しながら事務所内へ入りすぐに片づけを始めた。正直このまま捕まるのかもしれない、本当にまずい状況なのではないかと、内心戦々恐々としていた。

 ノートパソコンを破壊、中のハードディスクを水に浸してさらに破壊。電話機も破壊、残っていた紙の名簿はシュレッダー、焦りながら作業を進めていたその時、事務所を準備してくれた不動産屋と繋がっている携帯電話に留守電が入っていることに気が付いた。

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 留守電の内容を再生すると、「さっき管理会社に警察から問い合わせがあったと連絡が入った。その家の中で何が行われているのと聞かれてしまったよ。もう引き上げたほうがいい。とっとと片づけないとまずい事態になる」。昨日の夕方の時間に留守電が入っていた。ここで確信した。やはりこちらにも内偵捜査が入っている。もうすぐ警察がやってくる可能性が高い。

「あぁ……終わった……」

 早く片づけなければ……。そう思っていた矢先のことだった……。多数の人の足音がバタバタバタと鳴り響き事務所の外側にあるルーフバルコニーを囲いこむような感じがした。

 だが、カーテンを閉め切りにしていたので外の様子は確認できない。何かがおかしい。そう思った次の瞬間、今度は玄関からガチャガチャとドアをゆするような音が聞こえた。そして鍵を開けられドアが開いたが、内側のドアロックにより半開きになった。その隙間から怒号が鳴り響く。

「警察だ。警察だ」

 私は「ヤバい」と思わず叫んだ。もう一人のメンバーは察してあきらめたのかたばこに火をつけだした。ウイイイイイイイン……ギリギリギリギリ……玄関の方向から聞こえてくる気持ちの悪い音。目をやると鉄で作られた内側のドアチェーンをサンダーで切る音が聞こえ、火花が飛び散っている。

「あぁ……終わった……」

 そう思った瞬間、扉が開き数十人の捜査員が一斉に部屋に押し入ってきた。