月の最高報酬額は2000万円……しかし、そんな生活もすぐに終わりがやってくる。2015年特殊詐欺事件主犯として詐欺罪で逮捕され、今は犯罪撲滅活動家として活動するフナイム氏。ここでは彼が逮捕されたときのエピソードを紹介。

 フナイム氏による反省と警告の書『闇バイトで人生詰んだ。~元特殊詐欺主犯からの警告~』(かざひの文庫)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

特殊詐欺を働き続けた男の末路とは――。(写真はイメージ) ©getty

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逮捕の時

 2015年、私の詐欺師人生にとうとう終わりを告げる時がやってくる。

 ある日の夕方、高齢者を騙し入金、今日はもう仕事終わりにして飲みにでも行くか。そう思った私は後輩と一緒に〈のどぐろ〉のおいしいお店へ酒を飲みに行った。

 後輩とこの後はキャバクラでも行くかと談笑していた時、突然8台持っていた携帯電話のうちの一本が鳴った。今回の詐欺マニュアルを渡してくれた人間からだった。

「ちょっと嫌な報告なんですが、うちのグループの掛け子の人間が朝から連絡がとれないんです、全員。携帯電話も最初は繋がっていたのですが、今は電源が切られています。恐らくガサが入ったのではないかと思います。自分は他の部隊も持っているので、そっちのほう今大急ぎで片づけています。なので一旦事務所撤退して全部片づけたほうがよいかと思って連絡しました。受け子か出し子のほうから内偵が入っているとしたら、同じ出し子、受け子のグループ使っているので危険です」

 アルコールが体内で冷や汗に変わるのがわかった。酔いは一瞬で冷め、血の気が一気に引いた感じがした。後輩にはちょっと急な仕事が入ったからまた今度にしようと告げ、その場を後にし、慌てて私の詐欺グループの仲間に電話を入れ、先ほどの内容をそのまま伝え、これから一度集合し会議を開くと伝えた。

 約2時間後全員集合、車を走らせながら会議をした。私は内偵が入っているかもしれない。明日警察がガサ入れに来る可能性もある。今すぐに一旦詐欺事務所を全て片づけてパソコンや電話、名簿などを処分しようと提案したのだが、他の仲間に反対された。その理由は、まだ未清算の給与分があったからだ。ちょうどその時受け子のグループリーダーから、リスク対策のためお金の清算は週1回とか2週間に1回にしませんかと提案をされていたからだ。

 グループのメンバーはそれが気に食わなかったらしく、また私がそのお金を持ち逃げするのではないかと疑心暗鬼になっていたようだった。