「今日家に帰りたいか?」「奥さん泣いてたぞ」と警察からいじわるなことを言われたことも……。かつて特殊詐欺事件の主犯として活動していたフナイム氏。そんな彼が身を持って体験した警察とのやりとり、留置所生活の厳しさとは?

 フナイム氏による反省と警告の書闇バイトで人生詰んだ。~元特殊詐欺主犯からの警告~』(かざひの文庫)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

「奥さん泣いてたぞ」――留置所で噛み締めた、元特殊詐欺犯の後悔とは……。(写真はイメージ) ©getty

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「今日家に帰りたいか?」

 身体が震えてきた。精神が震えているのもわかる。怖くて怖くて仕方ない……私は恐怖心を紛らわすため、若い刑事に雑談をし始めた。「刑事さんその服おしゃれですね」。こんな時に出てくる言葉じゃないだろうと自分でも突っ込みを入れたくなる話だ。人は追い込まれるとわけのわからない行動をするのだと改めて気づいた瞬間でもあった。

 数時間が経過した時、とある刑事が私にこんなことを言ってきた。

「今日家に帰りたいか?」

 一瞬「えっ? まさか帰れるの? いやそんなはずはない……証拠だって残ってる。でももしかしたら……」。私が声を発せずにそんなことを考え「帰れるんですか?」と聞こうとした瞬間、被せ気味に刑事は続けた。

「帰れるわけねえだろ」。半笑いで馬鹿にした表情を浮かべながら私を見つめこう言い放った。明らかに悪意が見えたし、殺意が芽生えそうになった。一瞬でも妻と子供の元へ帰れると思った自分を恥じた。私はこれまで以上に警察官のことを嫌いになり、何を言われてもこいつらだけは信用しないと決めた。

 その後15時間以上拘束された後、この事務所で詐欺行為をはたらいていた証拠をしっかりと抑えられ。逮捕状を請求、深夜3時頃、詐欺容疑の現行犯で逮捕された。初めて手錠を腕にかけられた時、手首に伝わる手錠の重さが罪の重さと比例しているくらい重く感じ、手錠の冷たさは自身や家族の未来がいかに冷ややかになるかを予告しているかのように感じられた。

重く、冷たい手錠――。(写真はイメージ) ©getty

 警察車両へ乗り込み、刑事二人の間に挟まれ私は警察署へ連行される。ふとここで頭の中をよぎったことがあった。

「メディアに顔を撮られたくない」

 犯人が警察署へ移送される時、メディアの取材やカメラが車の中にいる犯人を撮影し放送することがある。私はそれを避けたかった。

「警察署の前にマスコミいないですよね?」

 ためらうことなく刑事に聞いた。