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「警察だ、おとなしくしろ。動くな」
私は最期の力を振り絞るかのように部屋の片隅に逃げ込み、体を丸くし、抵抗することもできなかった。捜索令状を見せられた瞬間「終わった……全てが終わった……」そう思った。その終わったという意味は、人生の終わりを迎えたと同時に、この詐欺師人生からもようやく終われるという妙な安堵感のようなものも少しだけあった。
「とりあえずここに座ってろ。詐欺やってたんだろ。いくら奪ったんだ?」
そんな話が永遠と続くが、私はひたすら「黙秘します」と答え続けていたが、今自分に起こっていることが現実なのか夢なのか全くわからないような精神状態だった。
「刑務所……怖い。人生詰んだ」
悪い夢なら覚めて欲しい。自分の手で頬を強く引っ叩いてみたがただ頬がヒリヒリと痛むだけ、いや諦めない、目を瞑って目を見開いたら目が覚めて自宅にいるのではないかと考え、実際にやってみたが……目の前に広がる光景は警察官による家宅捜索。
「お前眠いのか?」と刑事に嫌味を言われる始末。夢ではない、これは現実なんだと受け入れ始めると、段々と強い恐怖心に襲われてきた。中学時代に万引きで捕まった時に感じたあの恐怖が蘇る。
「妻になんて言おう……妻の家族には……子供にはなんて言えば。義父や母親にも知られたら大変なことになる。子供は犯罪者の子供として生きなくてはならなくなる。俺は刑務所に行くのか、刑務所……怖い。人生詰んだ」