天守が現存する城は全国に12しかない。それ以外の城の「歴史的価値」は無いのだろうか。歴史評論家で城マニアの香原斗志さんは「鉄筋コンクリート造の城にも名城はある。例えば名古屋城や広島城の天守はおおむね旧観を再現している」という――。
ホンモノの天守を持つ城は12しかない
数年来の城ブームは、新型コロナウイルスの流行によって一服していたが、昨年から各地の城に観光客が戻っている。とくに外国人観光客は円安の影響もあって激増し、すでにコロナ禍を上回っている城も多い。観光客のお目当てはシンボルである天守であることが多いが、じつは天守にはホンモノとニセモノがあるからやっかいなのだ。
明らかにホンモノなのは、現存12天守である。
弘前城(青森県弘前市)、松本城(長野県松本市)、犬山城(愛知県犬山市)、丸岡城(福井県坂井市)、彦根城(滋賀県彦根市)、姫路城(兵庫県姫路市)、備中松山城(岡山県高梁市)、松江城(島根県松江市)、丸亀城(香川県丸亀市)、松山城(愛媛県松山市)、宇和島城(愛媛県宇和島市)、高知城(高知県高知市)の12城で、そのうち松本、犬山、彦根、姫路、松江の5城は国宝に指定されている。
太平洋戦争の空襲で焼失後、鉄筋コンクリート造で外観が復元された天守もニセモノとはいえない。
名古屋城(名古屋市中区)、大垣城(岐阜県大垣市)、和歌山城(和歌山県和歌山市)、岡山城(岡山県岡山市)、福山城(広島県福山市)、広島城(広島市中区)で、6つそれぞれに精度の差はあるが、おおむね旧観を再現している。
福山城はかなり改変されていたが、令和4年(2022)の改修で元来の姿に近づけられた。
本格的な復元といえる天守
西南戦争で焼失した熊本城(熊本市中央区)や、戊辰戦争で被災したのちに取り壊された会津若松城(福島県会津若松市)も、外観の精度は高い。
平成時代に木造で建てられた白河小峰城(福島県白河市)や大洲城(愛媛県大洲市)、新発田城(新潟県新発田市)は、かなり本格的な復元だ。